目黒さんの家を出たときには
雨は止んでいた。
翔太「ゲリラ豪雨だったのかな。」
「そうかもしれませんね。」
雲と雲の隙間から
少しだけ太陽が顔を出す。
翔太「あの、俺も、連絡先交換したい…です…。」
「喜んで…!」
渡辺さんの連絡先を貰った。
翔太「傘、」
「あ、お返ししますっ」
これを返してしまうと
渡辺さんと会えなくなるかも。
考えるだけで悲しくなってしまった。
翔太「え、あげるって言ったじゃん。
これからも大切に使って欲しい」
「え、いいんですか…?」
翔太「雨の日はまた街で探しちゃうかも。笑」
「次は私が見つけます。」
翔太「フハハッ!じゃあ、見つけてね。」
私の家の前で2人で笑い合った。
翔太「じゃあ、また。」
「ありがとうございました。」
渡辺さんは来た道を戻って行った。
彼の優しさに胸がいっぱいになった。
少し苦しかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。