ハッとして我に返る。樹里奈が心配そうに顔を覗いてくる。
星護。ずっと考えてしまう。
今、どこにいるの。何をしているの。
どこか遠くへ、消えちゃったみたい。
紅亜も樹里菜も、私の事を必死に励ましてくれている。優しく微笑んで、気遣ってくれている。
・・・あの夜から、もう2週間経っているのに、私はまるで変わらない。あの時、私は何が出来たんだろう。
私は、星護に何もしてあげられなかった。
今は、一時保護所という所に預けられているのだと、この前おばさんが、、星護のお母さんが教えてくれた。
おばさんも、病院に搬送された星護のお父さんに付き添っていたから、星護本人には会えていないみたい。星護のお父さんは、頭を打撲していたり、鼻の骨にヒビが入っていたりと重症だけれど、心配はいらないそうだ。
会えない。こんな時にも、会えない。辛いよ。
照りつける陽射しの中を、3人で並んで歩く。
もう、夏・・・。
声が、上手く出ない。頭がぼーっとする。
暴行沙汰で、大怪我させちゃって、もしかしたら傷害罪で・・・。
いや、嘘。そんな、そんな事には、、。
2人とも、、。
そうだよ、ね。一番苦しいのは、星護なんだ。
私が不安に駆られてるようじゃ、助けてあげられないよね。
・・・私が、星護を守るんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!