静かな真夜中。時計は0時を過ぎて、日付けがちょうど変わったところ。シンデレラが慌てて階段を駆け下りている最中、なんて、小さな頃は思ってたのかな。
星護がパトカーで連れて行かれたのを見送った後、ママが仕事帰りに急いで来てくれた。
暗闇の部屋の中、一人ベッドの上。時々無心で触るスマホの光が異様に眩しくて、鬱陶しくなる。
ママの声と、ドアの開く音。
そう言って、テーブルにホットミルクを置いた。
頷いたつもりで、黙ってママが出て行くのを感じる。
星護は、どうなっちゃうんだろう。
まだ今年18になるって言っても、立派な暴行になるから、もしかしたら少年院?なんて事は・・・・・・。
やだ、お願い、そんなの嫌。
星護は確かにちょっと前まで人を平気で殴ってはいたけど、それもいつだって誰かを守るためだったし、今では更生するために勉強だって、あんなに頑張って。
何とか起き上がって、義足を外す。
義足を取ったら、一気に左足が短くなる。もう慣れた事だけど、それでもやっぱり自分でも違和感を覚える。
足が無いって、とことん不思議な感覚なんだな。
そんな私を、星護は「普通なんてのは、自分の中にしか無い」といつか言ってくれた。
嬉しかった。
それはまだ、中学の卒業式に告白されて付き合う前だったっけ。
────どうして、こんな事になっちゃったの。
星護のお父さん、何とも無いといいな。
実際どんな感じであんなになってしまったのかはよく分からないけど、私、星護が悪いと思わない。
霞さんのいない世界は、苦しい。
初めてあんなに心を固く縛り付けていた私の中の紐を解いてくれた、霞さんにずっといて欲しかった。
たった数ヶ月隣にいただけなのに、誰よりも大切な人。
霞さん。どうしよう。
私、星護が好き。大好き。
なのに、信じていいか分からなくなっちゃったよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。