外は薄暗い。日が経つにつれて、だんだんと日没も遅くなっていく。
もう6月だしな。
リビングにある付けっぱなしのテレビは、いつの間にか夕方のニュースになっていた。
そんな事を天気予報に向かって1人でブツブツ言いながら、ダイニングキッチンに立つ。
高校生の俺が1人でこんな一軒家に住んでるなんて、周りからはまぁ、これまでも驚かない奴はいなかった。しかも一人暮らしが始まったのは小5か6くらいの時だ、なんて言うと、「親は?」と必ず返ってくる。
それに対してはたまにムッとするけど、しゃーねぇ。それが普通の反応だもんな。
ってか、時々自分でも思うけど、こんなに人に対して優しくなったのも、きっと莉沙といたおかげなんだろうな。莉沙は「元々優しいんだよ」なんて言うけど。
小学生の時は、飯はすぐそこのコンビニで毎日済ませてた。いよいよ1人きりの生活になって、やけくそになりだした頃だ。でも、別居してる母親が心配して、しょっちゅう作り置きのおかずや金を持って来ていた。
今は、たまにコンビニの時もあるけど、ちゃんと自分で作るようにはしている。大したもんは出来ねぇけど。
母さんと別れたのは、9歳かそこらの時。離婚して、霞を連れてマンションに引っ越した。霞の病院や、俺を連れ戻すための理由で、遠距離では無かったのがまだガキだった俺の安心材料だった。
その上、霞達の住むマンションの隣に莉沙が引っ越してきた。今思えば、すげぇ偶然だよな。
✳✳✳
テレビはいつの間にか夜のバラエティ番組に切り替わっていた。
それを眺めながら、1人で夕飯を食べる。今作ったばっかの野菜炒めは、どうせ俺しかいないから味なんか何でもいいが、だいぶ上手くなったよな、俺。
食べている最中、不意に、ここに莉沙がいたらなんて考えてしまう。
もう、この暮らしも慣れたのに、やっぱりどこかで孤独感は消えないままなんだろうな。
こんな生活、周りから見たら良くないんだろうが、今さら何か変わるよりは、変わらずに俺はただ勉強を真面目にやって、それから・・・・・・。
と、その時。
玄関から、ピンポーンとチャイムが鳴った。
誰だ。宅急便なんて頼んでないし、莉沙はまさかこの時間には来るはずが無い。
何の怪しみも無く、俺は立ち上がった。
そこに魔物がいることも知らず・・・・・・。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!