第10話

10.星護
61
2021/07/03 11:00
  外は薄暗い。日が経つにつれて、だんだんと日没も遅くなっていく。


もう6月だしな。
  リビングにある付けっぱなしのテレビは、いつの間にか夕方のニュースになっていた。
星護
はっ、あと2週間で梅雨かよ。めんどくせぇ時期だな
  そんな事を天気予報に向かって1人でブツブツ言いながら、ダイニングキッチンに立つ。


高校生の俺が1人でこんな一軒家に住んでるなんて、周りからはまぁ、これまでも驚かない奴はいなかった。しかも一人暮らしが始まったのは小5か6くらいの時だ、なんて言うと、「親は?」と必ず返ってくる。


それに対してはたまにムッとするけど、しゃーねぇ。それが普通の反応だもんな。


ってか、時々自分でも思うけど、こんなに人に対して優しくなったのも、きっと莉沙といたおかげなんだろうな。莉沙は「元々優しいんだよ」なんて言うけど。
  小学生の時は、飯はすぐそこのコンビニで毎日済ませてた。いよいよ1人きりの生活になって、やけくそになりだした頃だ。でも、別居してる母親が心配して、しょっちゅう作り置きのおかずや金を持って来ていた。

今は、たまにコンビニの時もあるけど、ちゃんと自分で作るようにはしている。大したもんは出来ねぇけど。
星護
そういや、最近母さんに会ってねぇな
  母さんと別れたのは、9歳かそこらの時。離婚して、霞を連れてマンションに引っ越した。霞の病院や、俺を連れ戻すための理由で、遠距離では無かったのがまだガキだった俺の安心材料だった。

その上、霞達の住むマンションの隣に莉沙が引っ越してきた。今思えば、すげぇ偶然だよな。



✳✳✳



テレビはいつの間にか夜のバラエティ番組に切り替わっていた。

それを眺めながら、1人で夕飯を食べる。今作ったばっかの野菜炒めは、どうせ俺しかいないから味なんか何でもいいが、だいぶ上手くなったよな、俺。
  食べている最中、不意に、ここに莉沙がいたらなんて考えてしまう。


もう、この暮らしも慣れたのに、やっぱりどこかで孤独感は消えないままなんだろうな。

星護
このまま、時が過ぎるのが一番いいんかな・・・・・・
  こんな生活、周りから見たら良くないんだろうが、今さら何か変わるよりは、変わらずに俺はただ勉強を真面目にやって、それから・・・・・・。
  と、その時。


玄関から、ピンポーンとチャイムが鳴った。
星護
・・・・・・母さんか?
  誰だ。宅急便なんて頼んでないし、莉沙はまさかこの時間には来るはずが無い。



何の怪しみも無く、俺は立ち上がった。



そこに魔物がいることも知らず・・・・・・。

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