英繋汰side
「お前、なんでお父さんいないの?」
中学3年生、ここまで生きてきた中で
何度も答えてきたこの質問。
そう、僕にはお父さんがいない。
「僕が1歳の時、亡くなったんだ。」
そう言うとほとんどが気まずそうな顔をする。
「でも、寂しくないよ、すぐ会えるから。」
本当にすぐ会える。
僕の記憶にはほとんど残っていないお父さんの残像。
だけど、YouTubeを開いたらすぐに会えてしまう。
もちろん本当に会えるわけではない。
けど、寂しくなんてない。
お母さんやそらくん、みっくん、りっくんがいる。
沢山のYouTuberの友達がいる。
何より、
「英繋汰〜、帰ろーぜ!」
「うん!」
こいつがいる。
「ポン、お父さん見てくれてるかな、」
「見てるよ!笑」
僕らはお互いYouTuberの親の元に産まれた。
「英繋汰、あの写真持ってる?」
“ あの写真 ” ってのは
僕とお母さんとお父さんとポンとポンの家族、
そらくん、みっくん、りっくん、まほっちゃん、
その他の沢山のYouTuberさん達とした
僕の1歳の誕生日会での写真。
もちろん持ってる。
「持ってるよ!笑」
「なあ!英繋汰!あっちの空赤くね?」
「だね!お父さんの髪色みたい!笑」
「だな!やっぱ見てくれてるんだよ!笑」
「そーだね!」
お父さん、直接話した記憶はないけどね、
僕はお父さんを誇りに思うよ。
お父さんのおかげで沢山動画が残ってるんだもん。
僕とお父さんの2人の動画もたっくさん。
強く生きれてるかな、僕。
今年も年末年始はあの島にみんなで行くよ。
待っててね。
(そういや、ポンスとYouTube始めたよ。
いつか、お父さんに認められるくらいになるね。)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。