出会ったのは、
確か私が柱になったばかりの頃だったっけ。
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「裁判、ですか…?」
隣にいた背の高い銀髪の
音柱・宇随天元さんに言われ、首を傾げた。
「ああ。鬼を連れた派手な隊士がいるらしい」
「……派手な?」
派手な?
そう考えていると、同い年のしのぶちゃんが
言った。
「宇随さん、変な誤解はやめてください」
「悪ぃ悪ぃ」
「あなたさん、真に受けちゃダメですからね」
「……?う、うん」
そうこうしているうち、お館様がやってきた。
「あの、お館様。裁判とはいったい………………」
私が質問したら、横から実弥さんが言った。
「知らないのかァ?あなた……この餓鬼ァなァ、鬼を連れた隊士なんだよォ」
「え、?」
実弥さんのほうを向くと、木箱に実弥さんが
刀をさそうとしていた。
「実弥さん、何して……!?」
「止めろぉぉぉぉッ!!!!!!!!」
私が止める前に、拘束された少年が叫んだ。
傷だらけの体でかわいそうだ。
「禰豆子に、触るな!」
「黙れェ……」
グサッ
「……………………!!!!!!!!」
その場が、静まり返る。
何してるの何してるの?!
今グサッて、まさか……っ
「出てこい鬼ィ……お前の好きな稀血だァ!!」
「ああああああああっ」
「や、やめてっ………………!!」
私はつい、実弥さんにしがみつき止めた。
「やめて、……………………くだ、さい」
「なんでだァ……?」
「な、なんでって!こっちも言います。話も聞かずに試したりなんて、この子がかわいそうですっ!!鬼は、全部悪鬼だって、誰が言ったんですか……?」
思ったこと、感じたこと、全て伝えた。
わかって、かわいそうだよ?
わかってあげてよ。
私が、そうだったのだから。
そうしたら実弥さんは……
「悪鬼じゃなけりゃァ、なんだよ」
わかってくれなかった。
私は思わず、怒りがふつふつ湧いて、
実弥さんの頬を叩いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!