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第4話

ゆるりへようこそ
喫茶ゆるりに着いた。
店の玄関の前にはプランターが並んでいる。
僕には名前の知らない花ばかりだった。
水やりをしてる女性と目があった。
飯島洋子
飯島洋子
あら、夏樹。今日も伊織さんとチェスをするのかい?
僕の母さんだ。ゆるりで働いている。母さんはウェイターを任されているが、店主のマスターから頼まれてない仕事もする。
プランターに花を飾ったのは母さんだった。
最近、ハーブを育てるのが趣味になっている。
それだけではなく、母さんは玄関扉のゆるりのイラストも手掛けた。イラストは二匹の猫がテーブルの上で丸まって眠っている。
玄関を通る際、三本ものアーチ状の柱をくぐることになる。朝顔だろうか。そこにも柱に蔓や花が巻き付いていた。
玄関までの道すがら、左右を見渡すと全面芝生になっていた。白いベンチが二脚あり、左右ともにヒマワリが咲いていた。
これも母さんが手掛けた。
外観ばかりではなく、内装も手掛けてるとか。
ところで、改装に必要性な資金はどこから出てるのだろう。失礼ではあるが、ゆるりにはそれほど、お客さんが来ないからだ。
松島伊織
松島伊織
洋子さん、こんにちは。
今日もお邪魔させてもらいますね。
夏樹くんとおしゃべりしますね
飯島洋子
飯島洋子
あら、伊織さん、こんにちは。
伊織さんは夏樹のどこが気に入ったのかしら。
最近は反抗期で私の言うことを聞いてくれないのよ
飯島夏樹
飯島夏樹
待って、僕は母さんの言うことは聞いてる。
それじゃあ、母さんが忘れたゆるりの制服を渡さなくて良いかな
母さんは慌てた様子で『冗談よ』と言って、素早く僕が手にしていた制服入りの手提げ鞄を取り上げた。
松島伊織
松島伊織
夏樹君は優しいです。
私のアパートに彼が来た時は一緒に料理を作ってくれます。先週は夏野菜カレーを二人で作りました。私が疲れてる時も、そっと紅茶を出してくれたり気遣いがあります。
何よりチェスをしてくれる。
私は夏樹君の傍にいるだけで幸せです
僕は思わず気恥ずかしくなった。きっと母さんも同じだろう。だけど、伊織のその物腰の柔らかさと、はっきりと口に出せるほど、素直なところがある。僕は伊織のそんなところも好きだった。
飯島洋子
飯島洋子
伊織さんありがとうね。
良かったらこれからも夏樹と一緒にいてくださいね。
こうみえて、夏樹は寂しがりやなの
伊織は相好を崩して『はい!』と快活に言った。そして、髪に手を当てた。
母さんは、ゆるりで働いて以来明るくなった。家にいるだけでは刺激が少ないのかもしれない。新しい環境になれば、体が馴染むように人間はできているのかもしれない。
母さんの笑顔が増えたことは嬉しく思った。
飯島夏樹
飯島夏樹
伊織さん、立ち話もなんだしそろそろ中に入ろうか
伊織はコクりとうなずいて、僕たちはゆるりの玄関を開けた。
カランと玄関ドアのベルが心地良く鳴った。