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第6話

プレゼント
ゆるりには僕と伊織以外のお客さんは見られない。テーブルには二人して向かい合っていた。張りつめた空気が部屋中に立ち込めたように思えた。
重たい沈黙を破ったのはこの店のマスターだった。彼はいつの間にか僕たちのテーブルの前に立ち、ホットケーキを二人分を差し出した。バターが上に乗ってトローッと溶けていく様子がわかる。
マスター
マスター
若いお二人さんには笑顔でいて欲しいな。
それに夏樹君のお母さんの洋子さんにはお世話になってるから、頭が下がらないよ。だから、これはサービスだよ
松島伊織
松島伊織
わぁ、マスターありがとう!
飯島夏樹
飯島夏樹
ありがとうございます。
でも、僕たちは口論をしているわけではないので大丈夫です。
マスター
マスター
事情は知らないが、そんな辛気くさい顔をしなさんな。
これからのデートが水の泡になるぞ。
それを食べたらさっさと出ていくんだぞ
そうだった、僕たちはこれからショッピングに向かう予定だ。
わからないことを考えても仕方がない。
時間が経てばわかることだ。
今わかることは一つ。
僕は伊織に必要とされていること。それだけで十分だった。
それにしても、伊織は世界中で名前が知れ渡っているとは思いもしなかった。やはり、ネットや本で調べる必要がありそうだ。そこから何か糸口がみえたらと思った。
ホットケーキをほおばる伊織の表情は幸せそうだった。
松島伊織
松島伊織
夏樹君、見てみて!
この洋服はフリルが沢山ついてるよ!
僕たちは町一番のショッピングモールに着いた。
ショッピングとは言っても、二人とも大したお金を持ち合わせていない。だから、見て楽しむことにしている。いわゆる、冷やかしだ。
それでも、伊織はひときわ弾んだ声で洋服を手に取り楽しんでいた。
飯島夏樹
飯島夏樹
どうせだから、試着してみてよ。
松島伊織
松島伊織
えー、恥ずかしいよ。
私にはフリフリは似合わないよ
照れ隠しはいつものことで、本当はそのフリルのワンピースを着たいのだろう。
さぞ、その洋服と麦わら帽子が似合いそうだ。
伊織は清楚で可憐のように思える。
でも、僕の前では明るく素直だ。
そんな一面が僕だけが知ってると思うと嬉しくなった。デートの際はいつも伊織はジーンズばかりでスカートを履いたことがなかった。
やはり、試着して欲しい。
飯島夏樹
飯島夏樹
チェスで僕が伊織さんに勝てばその服を渡すよ。
だから、一度試着してみて。
ね? お願い。
松島伊織
松島伊織
チェスのことなら、私は負けないわ。
それなら試着してみる!
伊織はチェスのことになるとそちらの方に頭が切り替わるみたいだ。最近わかった。
数分後、試着室のカーテンが音を立てて開いた。
松島伊織
松島伊織
どうかな? 似合うかな?
内心、心臓の鼓動が聞こえないかと思うほど似合っていた。近いうちに花火大会があることを思い出した。その日は伊織もチェスのことを忘れて二人でゆっくりしたかった。
松島伊織
松島伊織
もう!何か言ってよー!
飯島夏樹
飯島夏樹
良いです
松島伊織
松島伊織
えーっ、それだけ? もう、仕方がないなぁ。
男の子は女の子をおだてないと駄目なんだよ
伊織が本当に世界を轟かせるチェスプレイヤーとは思えない程、可愛くみえた。
伊織に自販機で麦茶を買って貰うようお願いをした。彼女が離れた隙に、僕は店員さんにさっきのワンピースをこっそりと買うように頼み込んだ。