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第4話

よだかの星 4
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2020/05/28 08:56
 よだかはもうすっかり力を落してしまって、はねを閉じて、地に落ちて行きました。そしてもう一尺で地面にその弱い足がつくというとき、よだかはにわかにのろしのようにそらへとびあがりました。そらのなかほどへ来て、よだかはまるで鷲が熊をおそうときするように、ぶるっとからだをゆすって毛をさかだてました。

 それからキシキシキシキシキシッと高く高く叫びました。その声はまるで鷹でした。野原や林にねむっていたほかのとりは、みんな目をさまして、ぶるぶるふるえながら、いぶかしそうにほしぞらを見あげました。

 夜だかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。もう山焼けの火はたばこの吸殻すいがらのくらいにしか見えません。よだかはのぼってのぼって行きました。

 寒さにいきはむねに白くこおりました。空気がうすくなった為に、はねをそれはそれはせわしくうごかさなければなりませんでした。

 それだのに、ほしの大きさは、さっきと少しも変りません。つくいきはふいごのようです。寒さやしもがまるで剣のようによだかをしました。よだかははねがすっかりしびれてしまいました。そしてなみだぐんだ目をあげてもう一ぺんそらを見ました。そうです。これがよだかの最後でした。もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらってりました。

 それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。そして自分のからだがいまりんの火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを見ました。

 すぐとなりは、カシオピア座でした。天の川の青じろいひかりが、すぐうしろになっていました。

 そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。




 今でもまだ燃えています。

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