侑「思っとった通り…財布とジャージはアイツらの仕業やったな。
…勝手に人の私物触んなや、きっしょ。」
治「ほな財布中身ごと洗濯しとったるわ」
侑「やめい!!」
『…あ、侑のジャージたたんで
机の上に置いたまんまだ。』
侑「ええよ、終わったら取りに行くわ。」
放送「間もなく、午後の部が始まります。
午後の部、最初の種目は10人リレーです。
選手は速やかに___」
侑「あっ、俺行かなアカン!」
治「10人リレーでるんや、
俺はさすがに断ったわ。」
侑「俺おらんと負けてまうからな」
治「俺がおったらの間違いとちゃう?」
侑「なんやと!?」
『喧嘩しないで、ほら、早く行かなきゃ!』
そう言って侑と別れ、治と2人でテントへ向かう。
さち「あなた!えらい遅かったやん…!」
治「あなたな、他クラスの女子に囲まれとったんや。」
さち「…!ほんま……?」
『うん、笑
でも侑が来てくれたから…』
さち「っ……ウチが一緒におらんから…
ほんまにごめん、」
『さちは謝ら無くていいよ!
それに__もう大丈夫だから!』))ニコッ
さち「さよか…?もう今度からトイレの中まで
着いてくるわ…」
『いやいやそれはちょっと…(笑)』
__________________
治side
さち「にしても…宮(侑の方)が女かばうん珍しな。
やっぱしあなたん事好きなんやなぁ〜」
『すっ…!?えっ、な、そんな訳…//』
治「…ツムよか俺の方が好きやし。」))ボソッ
『……ん?
治?なんでそんな不機嫌そうな顔してるの?』
あなたに言われるまで自分が不機嫌な
顔になっている事に気づかなかった。
…俺かてあなたん事守りたいし。
ツムに遅れてあなたの元へ向かった時、
ツムがあなたん事抱きしめて…キスしとったんも
見とった。
俺……このままやとツムに負けて___あなたが
ツムとくっついてまうんやないかって、
不安になる。
治「__っ…」
『治、よーしよし。』))ナデ
治「___!」
あなたがニコニコしながら俺の頭を撫でた。
まるで___不機嫌な子供をあやす様に。
『何か___悩んでる?
私で良かったら話し聞______っん!?』
なんや……もう。
可愛すぎやんか。
俺は周りにバレないように振り向きざまにちゅ、
とあなたにキスをした。
治「…ツムやのーて、俺の事見とって…?」
『っえ?……//』
治「言うたやろ___?
俺……あなたに惚れてるんやって。/」
『う…//えと…私どうしたら良いか…//』
治「今はまだ…それだけ覚えとってくれたら
ええ。
……絶対俺に惚れさすからな。」
『っ……//わ、わかりました…??//』
治「ふ…」
ほんまに、あなたは天然やな
わかりました…?ってなんやねん(笑)
でもそんなとこがたまらんく愛おしいんや。
ツムなんかに負けてたまるか。
絶対惚れさせて、俺の傍で笑わせたる。
____________________
あなたside
『ああっ……ついに……ついに選抜リレー……』
さち「頑張ってな!」
『行ってきます……』
治「頑張ろな、あなた。」
『うん…!』
治「?なんや、また緊張しとるんか?」
『だって私が遅かったら…
治とか、皆に迷惑が…』
治「ドアホ」
ビシッ
『いたぁっ!?』
額を軽くデコピンされ、じーんと痛む。
治「心配せんでええ、自分がヘマしても
____俺が1位とったるから。」
ドキッ__。
『……治……!!か、、っ』
治「…?か?」
『かっこいい…!!』
治「ふ、あなたに言われるんがいっちゃん
嬉しいで?」))ニコッ
『いやぁぁあ治ぅぅう!!』
もうこの子いい子すぎて
ほんとに泣きそう……))
「選手、入場。」
放送がなり、それぞれ2グループに別れて
指定場所へ移動。
『ああ……治がっ……向こう行っちゃった……』
周りには1年やら3年の速そうな人達ばかり。
白、青ブロックが隣に並ぶようにして整列した。
私の走順はアンカーの1個前。
私次第で赤チームは大きく変わってしまうことも
考えられる。
『(ああ……やだ怖いここ………)』
でも、
頑張らなきゃ。
1番でバトンを渡して、治への負担を軽くしないと。
そうこうしているうちに走順が回ってきた。
赤チームは先輩男子が1番で持ってきてくれて__
赤男子「___ハイ!!」
パシッ。
『っ___!』
よし、このまま全力で走って治に渡すんだ!!
〝俺が1位とったるから。〟
治の言葉が脳内で響き渡る。
その一言のおかげで、私は今ちゃんと走れてる。
治が待つ1レーンを走り、
治「あなた!!」
『治_!!』
パシッ__。
バトンを渡した。
侑「なっ___!クソッサム!!」
続くように来た白チームからのバトンをもらい、
侑が治を追う。
『はあっ……はあっ……』
その他のアンカーも次々と走り出したが、
治に続く侑__2人に追いつく者はいないようだ。
『治っ____!!頑張れ!!』
侑が追い上げてる……!!
なんて速さなの…))汗
ゴールテープの手前__睨み合う2人。
1位でゴールしたのは_____
治「はぁっ………はぁ……っ…」
侑「…くっそ………っ……」
「1位赤ブロック!2位白ブロック…!3位__」
『やった…………やったぁああ!!』
放送「選手、退場。」
退場後、すぐに治の所へ駆け寄る。
『治ぅうう!!やったね!!』
治「!あなた!」
ハイタッチ__!しようと両手を上げると
ギュッ。
『わっ_!?』
抱きしめられてしまった。
治「あなたが1番で持ってきてくれたから
勝てたんや。……ありがとな。」
『ううん、治が声かけてくれてたおかげ!
だからちゃんと走れたんだ。』
そう言うとさよか_と笑い、
ゆっくりと私を離した。
『所で____あそこでしゃがみこんでるの
侑……だよね?』
グラウンドの端にある木に腰掛けてズーン……と
いかにもという様子で沈みこんでいる侑。
治「ああ……今はそっとしとった方がええで。
…多分俺に負けて機嫌悪いんや。」
『そう……なんだ。』
そして治は
ほな、また係行かなアカンから…と向こうへ行ってしまった。
『………ほっとけないな……』
でも…勝ったチームから何か言われてもな。
うーん。どうしたら……
ゆっくりと侑に近づく。
侑「……なんやねん。」
声のトーンで分かる。やっぱり機嫌悪いんだ。
『……どうだった?私の走り。』
侑「あぁ?……速かったな」
『でしょ……?……でも赤が勝てたのは
最後に治が頑張ってくれたからだよ。』
侑「…何が言いたいねん。」
『治……………かっこよかったなぁ〜!♡』
侑「_!?!」
そう言って侑の隣に座る。
『一生懸命走ってる横顔とか…』
侑「ゔっ……」
『バトン受け取る時の表情とか…』
侑「あ"っ……」
『もうめちゃくちゃかっこよかった!』
侑「なんやねんっ……!!そんなん思てるんやったら
サムんとこ行きやぁああ!!))泣」
耳をおさえそう叫ぶ彼
『……じゃあ、治のとこ行くね?』
そう言って立ち去る素振りを見せると
体操服の裾を掴む。
侑「……ほんまに行くなや。」
『ふふ……じゃあ、見せてよ。』
侑「_?」
『侑のかっこいいところ。』
侑「__!」
『ね……?だから、
そんな所で俯いてないで、元気だしな!』))ニコッ
侑「ふっふ……ありがとさん。))ポンッ
ほな…見ててな?俺の事。」
『うん。ちゃんと見てるよ___侑。』
彼はこうして笑ってる方が___
かっこいいんだから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。