あなたside
慎くんが帰ればすぐ支度。
楽しみすぎておかしくなりそう。
クローゼットを開ける。
ん ~ 、今日暑いからなぁ。
とりあえずデニムと白いTシャツ。
デニムにインして
めちゃくちゃシンプルな服にした。
そこに小物を付け足す。
髪の毛を内巻きに巻き、ベージュのバンダナを巻いた。
腕には時計をはめて、カバンは斜めがけの黒いカバン。
化粧も薄めにし、
お気に入りのピアスをつけてよし。
鏡を見てふと思った。
メッシュブラウンにしていたがちょっと薄くなってきてる。
こりゃ、美容院行かなきゃ。
髪も伸びてきてるし、この夏で結構切っちゃお!!
髪色と髪の毛を変えることに決定。
prrrrrrrrrr
慎くんに電話。
まだかなぁ ~ 。
慌ててたなぁ。
寝ちゃったんだ、ベッドにでも横になったのかな。
慎くんの準備が出来るまで待つことに。
携帯のカメラのアルバムを開く。
何故か無意識に手が動いて、押していた。
そこに広がったのは何枚もの壱馬との写真。
一番初めの写真は、初めてデートに行った写真。
何枚かすれば海岸でお洒落な人を真似したい!と
壱馬に駄々こねて撮ってくれた写真。
手を繋いで私の前を歩いてる写真。
その瞬間を撮りたくて頑張ってたら突然後ろ向いて
なにしてんの、って驚かれたなぁ。
その時の瞬間も撮った。
何だか、今思うと楽しすぎた思い出ばかり。
気づいたら目の前がぐにゃぐにゃに曲がってる。
やばい、お化粧が…
上を向いて堪える。
また、慎くんが 大丈夫 って慰めてくれるかな。
慎くんの優しい声で。
prrrrrrrrrr
表示されたのは
" 慎くん "
拾います…か。
なんかいい。笑
よしっ、待ってよう。
鏡の前で慎くんが来るまで待つ。
涙ぐんでないかな…
大丈夫。
もう、壱馬は元カノさんを…
どうしてだろ。
涙が溢れて止まらない。
もう、忘れたのに。
忘れようとしたのになぁ…
こんな時に、
ピーンポーン…
慎くんが来たのかも。
急いで慎くんの居る玄関の前にスリッパを履いて立つ。
ドアを開けようとした時。
手が止まる。
なんで…?
早く入れてあげないと…
ドアノブを回そうとするけど回らない。
回せない。
慎くんの心配したような声。
分かってるよ。
開けなきゃ…ね。
ぎゅっと手に力を入れるけど回らない。
笑ったら変な気持ちは飛んでいくかと…
さっき壱馬との思い出を、思い出していると
何故か泣けてきてしまった。
なんでかは分からない。
胸が苦しくなったからだ。
そう何度も何度も呼ぶ慎くんの声。
呼ばれる度、涙が止まらない。
優しく、暖かい声。
私を安心させてくれる慎くんの声。
私の耳にずっと鳴り響く。
慎くんの必死に私に伝える声を聞いて
鍵を開けた。
その時、勢いよくドアが引かれて私ごと持ってかれそうになった。
ぎゅっと、慎くんの胸の中に。
暑かった…よね。
汗ばんでる。
私、最低だ…人の気持ち考えてなかった…
私を離して目を見て話す。
なんだろ、慎くんがすごく男の人に見えた。
その…胸がいつもよりバクバクと高鳴る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。