第16話

誰なの、
2,917
2019/04/22 13:35
壱馬と飲みに行く時間になった。


私も壱馬も丁度仕事が終わり、玄関に向かう。
エレベーターに乗って1階を押す。
ドアが閉まりそうになった時。
長谷川慎
すみません…!あ、あなたさん!
あなた

慎くん!

長谷川慎
お疲れ様です。
あなた

おつかれ。

エレベーターの中で二人…
長谷川慎
あ、壱馬さんと飲みにですか?
あなた

そうだよ。

長谷川慎
壱馬さんめちゃくちゃ楽しみにしてますよ。
あなた

ほんと ~ ?

長谷川慎
楽屋でずっとニヤついてました。
あなた

ふふっ、嬉しい。

長谷川慎
じゃ、僕翔平さんとジム行ってきます!
あなた

頑張って!

と、降りていった2階。
シンと静まり返ったエレベーター。


途端にわかる、私の心臓の鼓動。
あなた

えっ…なんで?

バクバクと音を立てる。
ただ、緊張してるだけか…


" 1階です "


エレベーターが開き、玄関には壱馬の姿。
少し駆け足で向かう。
あなた

壱馬っ。

川村壱馬
お、きたきた。
あなた

ごめんね、遅くなって。

川村壱馬
ええよ、気にせんで。
行こか、と同時に帽子を深く被る。


芸能人じゃなかったら堂々と歩けるんだよなぁ。


けど、壱馬が芸能人じゃなかったら私達は出逢えてなかった。
複雑な気持ちになる。
最近、見かけるカップルを見て思う。
川村壱馬
なぁ、何処がいい?
あなた

壱馬の好きなところがいい。

川村壱馬
ん ~ 、俺の好きなところかぁ…
あなた

どこ?

川村壱馬
ここ。
携帯を差し出されて見た。
あなた

居酒屋?

川村壱馬
ここのラーメンめっちゃ美味しいから。
あなた

うん!食べに行こ!

川村壱馬
ほんまにいい?
あなた

いいよ!

そうして向かう居酒屋。
着いたのは芸能人が通いそうな場所ではない雰囲気。


路地裏にぽつんと赤い灯りが浮かんでいるだけ。


でも、隠れ家として有名そう。
川村壱馬
こんばんは ~ 、あ!おっちゃん!
おっちゃん
おぉ!壱馬 ~ !
川村壱馬
二人よろしく!
おっちゃん
お、彼女さんかねぇ!
川村壱馬
そうそう。
2人が案内されたカウンター。
おっちゃん
可愛い彼女さんやねぇ。
川村壱馬
やろ。
あなた

ちょっと…

そんなこと言われたら照れる。
おっちゃん
何、一般人さん?
あなた

あ、私ヘアメイク担当です!

おっちゃん
ヘヤメ…ク…?
あなた

えっと、髪の毛とかお顔とかを綺麗にします!

おっちゃん
あ ~ !お化粧?
あなた

そうです!

おっちゃん
お洒落さんやねぇ!
あなた

そんなことないですよ ~ !

おっちゃんと会話が弾む。
壱馬はここの常連らしく、ジム終わりによく来てたらしい。
お酒がどんどん進む。


最近、飲めてなかったからよっぽどか。
二人して頬を赤くする。
川村壱馬
俺、相当疲れてたみたいだなぁ…
あなた

少しは休まなきゃだよ。

川村壱馬
わ ~ ってる。
呂律が回らなくなってきている。
酔ってる?
あなた

おっちゃん ~ 、いつもこう?

おっちゃん
そうだよ ~ ?
彼女さんの話してはニヤついてね。
それがあなたちゃんだとは思わなかったよ ~ 。
もう、名前で呼ばれるように。
あなた

ですね。

すると
ガラガラガラガラ…
浦川翔平
おっちゃ ~ ん!!!
元気のいい人…!
あなた

翔平さん!

浦川翔平
ええ、壱馬さんとあなたちゃん!
川村壱馬
おぉ ~ 、翔平!
てっきり、翔平さんも彼女…さん?かと思ったら
あなた

慎くん!

長谷川慎
ふぇ!?
あなたさん…!?
川村壱馬
なんや ~ 、お前ら仕組んだか。
浦川翔平
そんな訳!
私達違うとこ行きま ~ っせ。
あなた

べ、別に!大丈夫ですよ!

みんな私を見てる。
あなた

えっと、せっかく来たなら…ね?壱馬。

川村壱馬
ん、まぁ…だな。
翔平さんと慎くんは私達の後ろの席に座った。


いいよ、と言ったものの、結構気まずい。
さっきより酔い出した壱馬。


大丈夫か?
あなた

壱馬っ、そんな飲んじゃダメだよ?

川村壱馬
ん ~ …
肩を揺するとうんうんと頷く。
かわいいなぁ…


いつも見た目はちょっと怖めでカッコイイのに


こんな可愛くて酔ってる姿見れるなんて私だけかな。
嬉しくなって、思いっきりお酒を飲む。
あなた

ふはぁ…

川村壱馬
葵…
壱馬が寝言を言った。


ん…?


葵…?


誰?
あなた

おっちゃん、なんか言った?

おっちゃん
え ~ ?何も言ってないよ?
あなた

ありがとう…

やっぱ違う…


壱馬の口からだ。


なに?


誰なの、葵って…
あなた

壱馬、起きなって。

川村壱馬
嫌だ…
あなた

え?

川村壱馬
別れたくねぇよ…
私の頭は真っ白に。


何も考えられなくなった。
別れたくないって、もしかして元カノ…?
おっちゃん
あれあれ、どうした?あなたちゃん。
あなた

え?

おっちゃん
目、涙出てるよ。
あなた

うそっ…

慌てて目を触ると濡れていて、泣いていた。
おっちゃん
どうした?
あなた

ううん…ちょっと…

私は財布からお金を出した。
おっちゃん
あなた…ちゃん?
あなた

ご馳走様でした…

私は急いでその場を立ち去った。

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