第18話

慎くんが
2,935
2019/04/23 22:31
あなたside
壱馬、多分私のこと好きじゃない。
歩きながらそう自分に言い聞かせて諦めようとする。


だけど、そんなことスペシャリストじゃない私には


ハードルが高すぎて無理だった。
忘れることなんてできない。
壱馬っ…


私は壱馬だけだったのに。
長谷川慎
あなた…さん…?
あなた

えっ…!慎くん…!

私は思わず立ち上がった。


なんで慎くんが来てくれるの。


なんでっ…


私がいつも辛い時、そばに居てくれるの?
長谷川慎
もう…
私のそばに来て優しく私を抱き締めた。


私の頭は何も考えられなくなった。


真っ白に。
あなた

え…?慎くん…?

長谷川慎
まじで焦った。
後輩じゃない、男の人の声。


耳元で囁かれるとドキッとする。
あなた

…ちょっと

おかしいおかしい。


慎くんがこんなことするなんて、優しさに過ぎない。
その場から離れようとするがもう一度引き寄せられて


慎くんとくっついたまま。


すごくドキドキする。


心臓の音が伝わってしまいそう。
長谷川慎
何があったんですか。
あなた

…何も

長谷川慎
ならなんで壱馬さん置いてきたんですか。
あなた

それは…

長谷川慎
ほら、言ってみてくださいよ。
僕、相談乗るって言ったでしょ。
とんとんと背中をさすられる。


優しい。


慎くんは。


私のことすごく考えてくれてるなって。
落ち着いて、慎くんに全て話した。


辛かったけど、聞いてくれる相手がいてよかった。
長谷川慎
少なくとも僕はあなたさんが必要っすね。
あなた

え?慎くん?

長谷川慎
僕、好きなんです。あなたさんが。
あなた

え?

長谷川慎
好きです。
何も言葉が出ない。


慎くん…が?


え、私壱馬がいるのに…?
私の心臓は速さを増して動く。
あなた

けど…

長谷川慎
返事はいいですよ。
あなたさんには壱馬さんがいますから。
あなた

慎くん…

わかってて、言ってるくれたの…?
長谷川慎
思いを伝えただけです!
もう思い残すことはないです。
そういう慎くんの目は少し赤くなっていた。


壱馬には忘れられてない元カノがいる。


きっとそう。


夢や寝言で出てくるくらいなら絶対諦められてないよね。


もう、駄目なんだと思い知らされたのかもだけど


どうしてもその現状を受け止められない私がいる。
あなた

ごめん、ありがとう。

長谷川慎
はい。
悲しそうな安心したような顔。
あなた

じゃ私帰る…!また明日ね。

長谷川慎
あのっ!
慎くんが私を呼んだ。
長谷川慎
まこっちゃんって呼んでください。
可愛いお願いだなぁ。
あなた

うん、まこっちゃん!

そういうと嬉しそうに徐々に口角が上がっていくのがわかる。


ありがとう、本当に。


私はただ暗い夜道を一人で進む。
壱馬、大丈夫かな。
ちゃんと帰れたかな。


私、置いてきちゃった…
ちょっと戻ってみようか。
路地裏に灯る赤色の提灯前。
あなた

すみません…

のれんを上げると
浦川翔平
あなたちゃん!
あなた

翔平さん…ごめんなさい。

浦川翔平
いいよ、まだ寝てる。
翔平さんは壱馬の隣に座って飲んでいた。


さっきよりも瓶が増えていて
翔平さんの横に座った。
浦川翔平
ん?壱馬の隣じゃないんだ。
あなた

はい…

浦川翔平
そっか。
何があったの?とは聞かずそっとしておいてくれる。
おっちゃん
どうする?もうそろそろ閉めなきゃなんだけど。
あなた

あ ~ 、私送っていきますよ。

おっちゃん
わかった。
浦川翔平
僕も一緒に行きますわ。
あなた

翔平さんも?

浦川翔平
一人じゃ重くて無理でしょ ~ !
あなた

…よろしくです。

そうして私と壱馬と翔平さんは外に出た。
もう、本当の気持ちを知った今、何をしていいか分からない。


どこまでしたら壱馬の為になっているのか考えてしまう。
はぁ、好きなのにな。壱馬が。


壱馬の頭には私だけじゃない誰かがいる。


そう考えたら辛いなぁ…


そんな時頭に浮かんだのが慎くんの笑った顔だった。
浦川翔平
ん ~ 、何笑ってんの?
あなた

え!いや、別に…

浦川翔平
ふぅ ~ ん ?
怪しそうな目。
あなた

そんな目で見ないでくださいよ!

浦川翔平
すまねぇなぁ。
はぁ、明日私はどんな顔をして壱馬に会えばいい?

プリ小説オーディオドラマ