3回ノックをしてはい?と慎くんの声。
ちょっとだけ安心したのか胸が暖かくなる。
キラキラした目で私を見つめる。
かわいい…
何聞いてるんだろ…
ちょっとだけ上から言ってしまう。
そんなつもりはないよ!
そう心で言っても通じないのか当たり前。
本当なんだ…
さつきちゃん、慎くんが好きで二人きりになったのが
緊張したんだと思うよ。
そう伝えたいのに、伝えられない。
慎くんにはおしえたくない。
そう思って言えない。
でも、慎くんすごい鈍感だよね。
すると、慎くんは
下を向いた顔を上げると慎くんの大きくて細長い指が
私の頬に触れる。
その頬に異常な熱が溜まっていくのがわかる。
恥ずかしい…
さっき玲於くん達のところで泣いてしまった跡か!
そう責められる慎くんの言葉に何も言えない
怒ってると思うのに、怖くない…
間違ってたらすみません!と付け足す。
慎くんの感は鋭いなぁ。
急にしょぼんとした言い方になる慎くん。
熱のせいか頬も赤くなっていて見ててドキドキする。
まるで、可愛い子が酔ってるかのよう。
そういうと慎くんは手を繋いできた。
熱を持った熱い手。
その熱が私の手にじんわりと伝わってくる。
そういうとぎゅっと繋がれて離された。
その瞬間なんとも言えない寂しさが心に残る。
髪をかきあげるようにする仕草。
半分まで減った水を持って部屋を出ていった。
慎くんに壱馬の話すると悲しそうになるんだもん。
そんな顔されちゃ、私だって悲しい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。