第12話
不思議な子
外に出ると雨は止まず、一向に強さを増す。
あれから、ちょっと待ってから行こうとなり、
二人してずっと夜空を見上げては止むのを待つ。
本当の理由、壱馬以外、あまり二人きりで居たくないのが理由。
どんなに信用してて、いい人でも所詮は男だし…
何があるか分からないから。
ちょっと、怖い…
なんて止む様子のない雨を見て言う。
慎くんは私の身勝手な意見に何の反対もなく
私の隣で一緒に待っている。
そう思えば私もちゃんと青春してたと実感。
私にはちょっと苦い思い出が多数。
今、こうして壱馬と繋がれて幸せ。
多分、凄く帰りたいんだろうな…
…仕方ないか。
…?
壱馬と…?
離れるのは寂しいけど、私の心配してたこととは
全く違う意見が聞けてビックリ。
寂しい と言葉にすれば余計に寂しくなることを忘れていた。
一段と寂しい気持ちで押し潰されそうになる。
2人、雨の夜道。
ひとつの傘、強い雨に打たれながら歩く。
慎くんは優しい。
気も使えてほんとにいい人。
なのにそんなことするはずないって分かってるのに
少し危機感を持ってしまう。
ぼそっと呟いた私の囁き。
慎くんの耳に届いていたみたいで
そう励ましてくれる。
彼なりの優しさ。
いつもは壱馬や翔平さんにいじられたりしてて
後輩なのに…私といる時は男なんだもん。
カッコイイって思えちゃう。
好きとかじゃなくて、男の人として尊敬する。
あんな人に昔、出会えてたらあんな苦い思いでは作られなかった。
な思わず溢れ出涙。
私に全ての傘を傾けてくれてる。
そんなことしちゃ、慎くんが濡れちゃうのに…
馬鹿だなぁ…
こんな人に優しくしなくていいのに。
高校時代、付き合ってすぐの彼氏がいた。
ルックスもかっこよくて性格も私のタイプ。
関わりやすくて…
初めて話した時から、ずっと気にかけていた。
それから、クラスが一緒になってずっと話すように。
ある日、彼から告白され、付き合った。
ここまでは最高な青春。
だが、ここで一変されたのだった。
ある、夕方。
雨で私は傘を忘れた。
走っていた時、たまたまのように彼が私の後ろからやって来て
傘をさしてくれた。
優しい。
慎くんと重ねてしまうの。
優しい人には裏があるんじゃないかって…
そして、それから彼の家に着替えなと入って
私は着替える気持ちでいたから何の気も持たず入ったその時。
後ろからベッドに押し倒され馬乗り。
それから、私の、ハジメテ は彼のものに。
過去のことを話したのは彼一人、慎くんだけ。
なんか話したくなった。
フォローを欠かさずしてくれる
背の高い慎くんは少しだけ足を曲げて私の目線に合わせ話す?
明らかな、反応を見せる慎くん。
…やば、言い過ぎた?
顔は沈み暗い。
あ ~ 、やっちゃった。
慎くんの気力奪っちゃった…
傘を持つ力も弱まって、フラフラしてる。
酔っ払ったかのよう。
危ないから私は慎くんの手の上から私の手を重ねた。
そうすればふらふらしなくて済むよね?
パッ…
さっきの慎くんじゃない。
顔を真っ赤にして私を呆然と見つめる。
どんどん雨に打たれる。
なんで、慎くんは顔を赤くするのか。
そしていつも驚くのか。
不思議な子。
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