第48話

悔しくて
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2019/05/16 13:55
慎side
あなたさんがドアの前で泣いてると考えると


居てもたってもいられなくなって
鍵が開いた瞬間勢いよくドアを開けてあなたさんを抱き寄せた。
長谷川慎
好きな人の為になることしたいんです、僕。
そういうとあなたさんは目をうるうるさせて私を見る。
わっ…、そんな目で見つめられたら気が狂う。


しかも密着…してるし。
あなた

…ありがと、慎くん。

ああ、やっぱ


" 私も好き "


とはなってくれない。
先が思いやられるな。
あなたさんをもう一度ぎゅっと抱き寄せた。
長谷川慎
あなたさん、今日は辞めておきましょ?
あなた

え?

長谷川慎
あなたさんの笑った顔の時に行きたいです。
あなた

でも…

長谷川慎
今日は…僕の為にも。
さっき思い出したんだが、壱馬さんと翔平さんと


遊園地に行く予定を忘れていたから。


ああ、仕事でどっぷり言われるだろうな。
あなた

わかった…ごめんね、慎くん。

長谷川慎
いえ、いいですよ。
しかし、暑いなぁ…


あなたさんは部屋に入れてくれて昨日居た部屋。


何か懐かしい感じ。
変わらない可愛い雰囲気のあなたさんの部屋。


昨日と今の雰囲気を知れてるのって僕だけ?


特別な気分になって1人浮かれてる自分。
あなた

ん?何笑ってるの ~ ?

キッチンで珈琲を用意するあなたさん。


微笑みながら僕を見つめるその顔は僕をいつまでも慣れさせない。
長谷川慎
いえっ、お気になさらず。
あなた

変なの ~ 、慎くん。

そして、珈琲の入ったコップを僕の前の机に置いた。


その横に、あなたさんも座る。
沈黙の時間が続き、何か話さないとと思った時、
あなた

私、美容室行きたいんだよね。

長谷川慎
美容室?
あなたさんが口を開いた。
あなた

ほら、色落ちてきたし、髪の毛切りたいの

僕に見せるように髪の毛を少しの束を持ち上げた。
長谷川慎
伸びましたね。
あなた

そうそう。

長谷川慎
あ、
あなたさんの髪の毛にホコリ…
取ってあげるとビクッと小さくなる、
長谷川慎
怯えないでくださいよ ~ 、
あなた

ご、ごめんっ!

サラッと触れた髪の毛。
長谷川慎
綺麗な髪…
毛先を僕の指ですくう。
あなた

そ…う?

照れてるのか頬から耳が赤く染っている。


かわいい…
おっと、にやけてしまいそうだった。


危ない危ない。
長谷川慎
あ、僕のお父さん美容師なんで
頼んでおきましょうか。
あなた

え!?

長谷川慎
ほら、お金節約になりますし
僕だって今でもお父さんですよ。
あなた

めちゃくちゃ助かる ~!

長谷川慎
今度実家帰るんでその時、行きましょ。
うん、そう笑うあなたさん。


横顔を見つめる僕。


はぁ、まだ彼女の頭には " 壱馬さん " という人がいて


僕だけに染ってくれる事は無い。


あなたさんと一緒にいると楽しいし幸せ。


けど、それと同時にあなたさんの本当の思いなどが


見えてきてしまって僕の胸を痛めつける。
あなたさんの側にずっと居たいのに


居たら僕はあなたさんの思いの妨げになると


居ちゃいけない気持ちにもなる。


咄嗟に僕の口から出ていた言葉。
長谷川慎
あなたさんは、まだ壱馬さんの
こと忘れられてないんですか?
あなた

え?

長谷川慎
え?あ!
おいおい、何聞いてんだ、ばか…
長谷川慎
忘れてくださ…
あなた

なんだろう、おかしいよね。私。

苦笑いで珈琲の入ったコップを手に取って口に含む。
あなた

普通別れたなら写真とか見て
イラついたりするのに私、全くしない。
それ以前に思い出してちょっと恋しい気持ちになる。

長谷川慎
…それはまだ忘れられてないんですよ。
あなた

…忘れたい。

長谷川慎
本当に?
あなた

うん…

忘れれるもんなら


と、付け足した。
僕は、諦めた方がいいのか。


僕に振り向いてくれる日は程遠いと感じた。


いや、一生。
長谷川慎
振っちゃった…んですよね?
あなた

そうだよ。

そうだよ。


というあなたさんの言葉で途切れた会話。


そんなとき
こてっ。
僕の左肩に暖かい重み。
あなたさんの頭。
長谷川慎
あなた…さん?
あなた

っ…まこっちゃん…

コップを机に置いて僕の袖を掴む。


あ ~ 、僕ばっかそうやって期待させられてる。
長谷川慎
な、なんですか…
あなた

私、慎くんのこと好きになりたいな。

長谷川慎
えっ!?
あなた

そしたら何もかも楽になるのに

ああ、そうか。


あなたさんの言った言葉の意味。


それは、あなたさん自分自身の気持ち、


壱馬さんへの思いを消すための僕であって本気の思いじゃない。
そんなこと言われたら考えてしまう。


今、めちゃくちゃ悔しくて仕方がない。

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