お金を使う訳には行かないので、本当に辛くなった時に薬を飲むために飲んでいない。
心配そうに私をのぞき込む拓斗
拓斗が袋を入れたゴミ箱を私に手渡してくれた。
ゴミ箱に吐く私を見て、拓斗は水を持ってきてくれた
駄目だ、クラクラする
最近あんまり食べてないからかな…
退院してからバイトをしていたけど、今は週に1回行くぐらい
あまり布団から起き上がれない
拓斗が寝たあとの事だった。
わたしは無理矢理体を起こして家事をする。
その時だった
ービシャっ
赤い血を口から吐き出した。
かくん、と膝をつき、座り込んだ
口を押さえている手から血がゴポゴポと溢れる。
苦しくて苦しくて…
薬…
わたしは薬に手を伸ばした。
袋からだして手に取った時、また血を吐いた。
手が震えて薬を落としてしまった。
霞む視界で必死に薬を探す。
やっと見つけて流し込む。
片付けないと…
ードサッ
力が抜けて倒れ込み、そのまま眠りについた。
まだ薄暗い朝に目が覚めた私は血の片付けをした。
その最中にまた苦しくなった。
薬飲んだのに、なんで?!
ピンポーン
だ、れ?
私はなんとか立ち上がり、フラフラと玄関まで行って鍵を開けた。
ガチャ
ふらっ
扉を開けることは出来たけど、そこで力尽きてそのまま紫耀の胸に倒れ込んだ。
そしてまた、吐き気がこみ上げてくる。
大量の血を吐いた雪はズルズルと力が抜けていく。
紫耀が救急車を呼んでくれたけど、ここまでは少し時間がかかるらしい。
苦しい…
紫耀は私を自分を支えてくれている。
血だらけの部屋と雪は拓斗にとってショックが大きく、泣いている。
さっきから雪の呼吸がおかしくなってきた。
ーピーポーピーポー
ピーポーピーポー
救急車に乗り込んですぐの事だった。
びちゃっ!!
雪は大量の血を何度も吐いた。
雪の手から力が抜けたと思えば、どんどん手が冷たくなっている。
異常を知らせる機械音が鳴り響く車内
青白い顔をした雪を見ていることしか出来なかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。