とある書店。
私たちの仕事は稀モノについて調査すること。
稀モノ関連の事件は今年に入って20件もあった。
なのでこうして常に見廻らねばならない。
滉は、昔から無口で私たち兄妹以外誰ともつるもうとしない。その理由に私は気づいていた。滉はフクロウのスパイで、本当はカラス───つまり裏切り者だから。だけど、私はそれを誰にも言うつもりもない。滉が話してくれる……その時まで。
そんなことをふいに思った自分がいた。
やはり私は滉に恋しているらしい。
そんなことを思っていると、滉が話しかけてきた。
こうして調査もキリのいいところで私たちは行きつけの喫茶店───フラマンローズで昼食を摂った。
店員))いらっしゃいませー!ご注文は?
ほぼ同時だった。私と滉は顔を見合わせて笑ってしまった。
そんなくだらない会話をしつつも昼食を摂った私たち。
昼食を摂り終わり、午後の任務をスムーズに終わらせ、アパートへ帰ろうとした………その時だった。
あの男が現れたのは。
私はこいつが憎い。それは何故か。理由は簡単、滉を拘束している………つまりカラスとして活動させられているから。私は四木沼喬が許せない。
私は滉の方を横目で見た。滉の表情は驚いているようだが、四木沼に逆らえないことはわかっているのだろう。従うしかないと思ったらしい。
私は車に乗った。もちろん滉も。しかし、一言も話さなかった。話してしまえば……どちらかがやられるのではないか。そう思ったから。
続く
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。