ひとまず、天田先生は愛華ちゃんを応急室に連れて行った。
はぁ…と密かにため息を付きながら、少し床に着いた血を拭いていた。
一時間くらい前、私と愛華は病室の窓に寄りかかって日向ぼっこをしていた。
実は病室を出て突き当たりの右らへんに廃材が置いてあり、好きに工作等に使っていいのだ。
と、病室の端に置いてある工具貸し出しボックスに見に行くと、ミニダンボールハウスを作るのに必要なカッターがなかった。
と、病室を見渡すと丁度端っこで季楽さんがカッターで何かを切っているのが見えた。
いつも突拍子な愛華の事だから、予想はしていたけど…
話しかけた瞬間、今までの工作を楽しんでいた笑顔は消え、厳しく冷たい表情になった。
やばい、季楽さんが完全に愛華のペースに飲まれている。
助け船を出そうとすると
季楽さんは更にぐっと険しい顔を見せた。
季楽さんは声を荒らげながら愛華に詰め寄ってきた。
どう…しよう。止められなかった。お姉ちゃんに怪我させた時みたいに…
涙がボトボトこぼれ落ちている。相当ショックだったのだろう。
そう言い私は病室を後にした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!