…この喧嘩が始まったのはほんの3分前位のこと。
最近ズハオンニは、私に対して凄く冷たい。
おやすみもなかなか言ってくれないし、正直辛い。
ズハオンニのインスタを見ても、大半がクラオンニとのツーショだったりウンチェに関する投稿だったり。
なんで、彼女の私とは撮ってくれないの?
いっつもそう言うけど、こうゆう時に限って喋らない。
…ズハオンニは、思えばずっとそうだった。
いつか昔に告白してきた癖に、付き合った瞬間たどたどしくなって。
ハグ、キスとか以前に手すら繋いだことはない。
奥手すぎるズハオンニとの付き合いも、いい加減疲れた。
…あぁ、もう、イライラしてきた。
泣きそうになるオンニを見ても、今日だけは何とも思わなかった。
可愛いとか、そんな気持ち本当に少しもなくて。
ズハオンニの遮る言葉を無視して、外に飛び出す。
はぁ、と溜息をついて、ロック画面を開く。
…ズハオンニの、横顔。
昔…付き合う前から、ずっとこの壁紙。
……たしか、付き合う前は両片思いだったんだっけ。
とりあえず、誰か泊めてくれないかな。
そう思い、電話をかけたのは『あの人』だった。
ドアを開けてくれた人にそのまま飛びつくと、「おんに!?危ないですよ〜」って支えてくれる。
私はこの可愛い後輩に、包み隠さず話した。
ズハオンニと付き合った時から構ってくれなかったこと。
最近構ってくれないし、進展がないこと…
言われてみればそうかもしれない。
前までは何をやっても様になるなぁ、なんて思ってたのに、最近はズハオンニが何をやっていても、どうでもいい、私には関係ないとしか感じなかった。
不安になってきて…
なればなるほど、本当は好きじゃなかったんじゃないか、って思えてくる。
悩みに悩んでいる間、不意に後ろからハグされた。
レイに励まされると、本当に上手くいく気がしてきて…
スマホの画面を付けると、ズハオンニからの着信が1件だけ来ていて、背景画像にも可愛いオンニが居た。
レイが画面を覗き込みながらそう言ってくる。
語尾の方はテキトーに言うイソに、生意気な〜!って言おうとしたけど…ほんとにイソの言う通りだ。
…なんて考えてたら、本当に彼女からの着信が来た。
泣いてるのか、嗚咽がたまに聞こえてくる。
それ位、私のことを好きで居てくれる事が本当に嬉しい。
私、オンニ達に嫉妬しちゃったんだ。
いっつもズハオンニと写真撮って、仲良さそうに抱き合って…
結局…ズハオンニに無関心になろうとしたのに、そんなこと出来なくて。
いつまでも好きなんだな、私。
そう言うと、ズハオンニは『良かった…』って言って泣き出してしまった。
レイはそう言うなり、私を宿舎から押し出した。
今、家の前。
何回か戸惑ってから、浅い呼吸をした。
ガチャ、と鍵を開けると、ほんのり彼女の香りがした。
そっと奥のリビングに進むと、ソファでぐっすり寝てる愛しの彼女が居る。
目が腫れていて…泣いてた事が分かって、ちょっとだけその頬に触れた。
暖かい頬に触れた瞬間、その冷たさに驚いたのか、オンニはぴくって眉を上げた。
ズハオンニは眉を顰めながら私を見ると、また泣きそうになってる。
彼女をそっと抱き寄せると、照れ笑いしながらもされるがままになってるオンニ。
…可愛い。
オンニの柔らかな唇に、そっと自分のものを重ねた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!