第4話

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2019/05/11 22:47
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彼はちょっと不思議ちゃんだったりする。
いや、 ” 不思議ちゃん ” と周りに呼ばれたりするオレにそう言われるのは嫌かもしれないけど。



「ありがとうございます」


年がひとつ違うだけの先輩後輩という肩書きに囚われて、今だって彼は敬語で俺に感謝を述べた。



そんな固くなくていいんだけどな……。


そりゃ、世間一般的に言えば目上の人には敬語を使え。なのだろうけど、俺はそこまで偉くないし、もっと柔らかく接してほしいな。



「もー、松村の北斗さぁん、いつもおかたいんだからぁ」



「うるせぇ」



じゅりが彼の方に腕を回してウザ絡みする。
彼はじゅりの腕を払って俺の横にどかっと座った。


彼は、彼を見る俺を一瞥して、持ってきていたサンドイッチを1口頬張った。



「もー、北斗さん怒んないでってば」

「怒ってない」


じゅりも続いて彼の隣に座ると、だらしない声で言った。じゅりはじゅりらしいけど、彼が居るっていうこの空間がちょっと調子が狂うような気がした。




もう、じゅりと俺の秘密基地じゃないな。




彼とじゅりのやり取りを見て俺はクスッと笑って見せた。





「あ、きょもが笑った!真剣に話してるのに!」

「なんだよ、いいだろ」

「良くない、良くない!!じゅったんは!真剣に!話してるのに!!」

「えー、俺はじゅりが楽しそうにしてるのを見て成長したなーって思っただけだよ??」



あーだ、こーだ言うじゅりだけが騒がしくて、でも自然とうるさいとは思わなくて、となりを見れば、彼もクスクスと俺とのやり取りに笑っていた。


なんだ、可愛いじゃん。




「え、きょもって俺の母ちゃんだったの?」

「なんで俺が母ちゃんなんだよ、父ちゃんだろ」

「だって、父ちゃんって感じしないし、綺麗だから……あ、姉ちゃんか!」

「失礼だな!!」


弁当を広げながらじゅりと俺の言い合いになっていて、気づいたら彼はもう食べ終えて俺らのやり取りに頬を緩めた。


終盤に差し掛かったところで彼は声を出して笑い、それを俺とじゅりが同時に見て、 ” 笑った ” なんて。


「2人は仲いいんだね?」


「ちが、こいつとは腐れ縁の幼なじみだから!」


なんて食い気味に俺が否定する。
一方じゅりは……


「そ、小さい頃から仲良してもらってんの」




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