心霊スポット前にて。
怪研メンバーは恐怖していた。部長の心霊スポットに向けるワクワクした視線とやる気に。
皆は思った。『ここ...本物!!』
「本っ当に行くんですか...?」
「勿論だっ!!」
美玲の問いかけに間髪入れず答える。
「何かあったら?」
ニヤッと真野くんを見てから答える。
「やつがいるだろ?何かあったときは生贄にすれば良い!!」
真野くんが一歩二歩と後ろに下がる。
「じゃあ入ろう!勿論お前からな!w」
そう言って部長が指名したのは真野くんだった。
玄関先まで入ったが、もう引き返したい気分になった。
ただ1人乗り気なのは部長だけ。
「さあ、入るぞ!!」
そう言って純の肩をポンと叩いた。
それを見て真野くんが安心したようにホッと息をつく。
純は...何かに驚くようにびっくりしていた。
恐れていたことが起きた。
純と美玲以外のメンバーが迷子になったのだ。
幽霊をみたと言って部長が深追いしていき、
それに無理矢理連れて行かれた真野くん。
写真を撮りに京子さんが奥に走って行った。
「心霊スポットではぐれんのって...」
「どうすんのさ」
そういえばと思い出したように美玲が言う。
「さっき部長に触られたときなんであんなにびっくりしてたの?」
「ああ、あれ」
純が肩を拭って美玲につけた。
「いやぁーーーっっ!!!」
それをまた付け直す。
「マジ萎える」
「ってか話逸らすなっ!!つけるな!!」
「ごめんごめんw」
ふぅ、と息を吐いて純が言う。
「多分、真野は見えていた。」
「?」
考えをまとめるかのようにして。
「部長が俺の連れていた霊を祓いやがった。」
話を聞くところ、純は幽霊を適当なところに離そうと思っていたのだがその前に部長が祓ったという。触れただけで純の束縛にかかっていた霊を簡単に祓うのは並みの霊能力者にはできないらしい。
それをした部長に驚いた。
「"純が能力使える"のは知ってたけど、部長はそんな話聞いたことないよ。」
「同じような力を持つ人は大体わかるけど隠せるのは...いやぁ、まさかなぁ」
「何が?」
「じゃあさ、部長が青崎の人間に見えるか?」
青崎家、陰陽道の一族で美玲の一族である円城寺家を守る。美玲は昔から青崎家の誰かが許婚として育った。部長が青崎家の人間となると...
「見えない、てか純がなんで知ってんの!?
青崎家のこと!」
「まぁね。でも青崎家には結構いっぱいいるからね、仮に部長がそうだとしても他にもいるし」
美玲が少し安心した。あんな部長とは死んでも無理だ。
「他には誰がいんの?!」
笑顔で純は答える。
「俺にしたっていいんだゾw?」
「冗談言わないで、死んで?」
もはやここが心霊スポットだと忘れている。
「うーんとね、年齢的には...颯斗とか、
純平兄さんじゃないの?」
「純平...颯斗...あれ?廊下全力疾走してたのって...」
純は少し寂しそうに言った。
「純平兄さんに会いたいなぁ」
部長、京子、真野。
御三方は今リビングを物色していた。
京子さんの撮る写真には必ずオーブが写る。
部長、真野くんは帰り道を探していた。
「どうしましょう...完全迷子ですよ、中学生なのに」
「お前飛んでけ」
「無理です。」
京子さんはそんなのお構いなしに写真を撮りまくる。
「なんかないんですか?式神とか」
ないんだろうなぁと思いながらも真野くんが聞くと。
「その手があったか!」
ポケットから紙を取り出し、ふぅっと息を吹きかけるとその紙が動き出した。
「き、京子さん行くよ!」
今日は怪研メンバー皆がハメを外して遊びまくった。そんなことしていい訳なく、出てきた直後から生徒会長、青崎颯斗から叱責を受けるのであった。
「今後はちゃんと生徒会に許可を得てからにしてね」
部長と颯斗が目線で会話する。
ーお前に関しては絶対許さねぇー
ーそれくらい見逃したっていいのに、兄上ー
色々あったが新入生歓迎会(?)は成功に終わったのであった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。