田舎町の中学校に交換留学生が来て2日経った。
交換留学生は東京出身だ。
田舎町では留学生、ましてや都会と関わりがない。だから交換留学生はクラスの"女子"の注目を集めた。ただ1人を除いて。
交換留学生の名は佐々木純。
東京出身の中学2年生。
学校に来て早々その明るいヤンチャな性格と美貌であっという間に学校の過半数の人と"友達"
になった。怪奇研究部に入部決定。
ーあんなやつの何がいいんだか?ー
クラスの中心となって笑いながら話す純を見て唯一純の人気を集めなかった女子が思ったことだった。
その女子の名は円城寺美玲。
都会と縁のない田舎育ちのポニーテール女子。
怪奇研究部の副部長。
純とは昔、よく遊んでいた。
ーアイツなんてクズの極まりよ?早く目覚めま
しょうよー
目の前の光景が煩わしくなり美玲は教室を出た。
それを横目で見ていた純が後から追いかける。
「部室行くんでしょ?俺も行く〜」
走って追いついてきた純が美玲に話しかける。
「まだ時間じゃないんだし女の子達と遊んでれ ば?ハーレム女子好き男子」
「えっ?何何?嫉妬?嫉妬ですかぁー、美玲さん見かけによらずっ...」
美玲の肘鉄。
ーこういうところが本当にウザい。死ねー
「ウッザいんだよテメェ、マジ死ねっ!大体アンタなんでわざわざ怪研に入ってきたんだよ。生徒会入りゃ良かっただろうがクズっ!」
「だって心霊って楽しいじゃん?それに生徒会はちょっと...無理」
「はぁ?アンタ東京で生徒会やってんだろ」
痛いところを突かれたように純があからさまに言葉に詰まる。
「だって生徒会長なんかヤダし...」
「だってだってうるせぇな」
美玲は歩く速度を上げる。
次の突き当たりを右に曲がり、そこからまた突き当たりまで歩く。1番端の部屋こそ怪奇研究部の部室だ。
ガチャリと扉を開ける。
美玲は身構えた。また"昨日のように"なるかも知れなかったからだ。
「っ...」
どうやら美玲が思ったようにはならなかった。
「ん?どした、入らないの?」
「大丈夫そうだから入るよ」
「大丈夫そうだからって...」と後ろで純が呟くが無視する。どうやらまだ部室には誰も来ていなかったようだ。
残りのメンバーが揃うまで美玲は純にメンバーを軽く紹介することにした。
「知ってるだろうけどメンバー改めて言うね。
1年生の京子さん、2年生で隣のクラスの真野くん。」
すぅっと息を吸って1つ間をおいて続ける。
「一度会ったら絶対忘れられない。怪奇研究部のハイテンション変人の部長!」
「ゼッテェ忘れねぇよあんな強烈野郎」
あれは昨日。初めて部室に顔を出した時。
美玲に案内され、部室の扉を開けようとしたまさにあの時!突然開いて来たと思えばいきなり純の方へと突進!真野曰く純が来る10分前から構えていたらしい。
純はそのまま避けて、避けられた部長は目の前に溜まった段ボール箱にストライクした。
何事もなかったように改めて挨拶をしたのだった。
美玲もまさかこんなご挨拶をしでかすなんて思いもしなかった。
だから今日もあの変人のことだ。リベンジをすると見込んで構えたがそもそも居なかっただけだ。誰彼構わず馴れ馴れしくする人。
まさに生きる伝説!危険度MAX!ザ・変人!
部長はある意味皆に一目置かれている有名人だ。通り名は数々。その一部が上のものだ。
「それで副部長の私。以上4人の部活だよ。純が入って5人になったけど」
1人加わったことで美玲はこれからの部活動にワクワクしながらも部長のことで恐怖の方のドキドキをしている。
美玲は知らなかった。純が加わることで日常が崩れ始めることを。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。