木の匂いがふわりと香る
ゆっくり目を覚ますと知らない部屋にいた
「水・・・」
木でできた部屋に
木でできた小さな水槽
私はその水槽の中で目を覚ました
最後の記憶は知らない男の人が私の手を引いた
そういえば・・・
大介「おかしいですね、王様の娘は体が悪くて寝たきりだと仰っていたのに」
あれこれ思い出そうとした瞬間
入口から人が入ってきた
大介「なーんて、あ!起きたじゃん。おはよー」
さっきの低い声とは打って変わって
ちがう声で話し出す
大介「あ、そうだよね。俺は佐久間大介、よろしくね?」
「あ、あの、」
大介「あー、今からね、怪我の治療するからねっ!痛くないからそのままでいて?」
スーッと私の腕の上を彼の手が滑る
するとドアを叩いて赤くなってしまっていた手が
元の色に戻り痛みも消えてなくなった
「あなたはっ」
『悪魔』そう言いかけて口を止める
私も彼も同じ人種
でもこの言葉を口にするのは違う気がして
ほかの表現は無いものかと頭を動かす
大介「俺たちはね、悪魔なんかじゃなくてスペシャルなだけだよ」
ふと視線を彼に戻すと
彼の大きな瞳が私をしっかり捉えて
キラキラと輝いていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。