~あなた~
翌日、レッスン中最後の動きを教わったんだけど、、
む、無理っ!
無理無理っ!!
か、傘の中でちゅーなんて無理だよっ、
いや、実際にするわけじゃないけどさ、
あぁぁぁあ、もう無理、
・・・できない、できないよ、
と、通す、?
え、最後まで、?
し、しかも、練習は傘ないよ、?
どうしよう、どうしよ、ほんと。
気づいたら、他のダンサーさん達はまた端っこにはけてた。
・・・集中だよ、集中。
、
ついに来てしまった大サビ。
余計なこと考えるな、私。
演技、演技。
全然気にしないふりだよ。
恥ずかしくないよ、大丈夫。
“僕らの時計の針がもう二度と離れないようにKissをしよう”
エアー傘を倒して、キスする振りをする。
・・・待って、これ、想像以上にドキドキするよ、
キスはしないけど、顔、すっごく近い。
今絶対顔赤いな、もういいや。
手を叩く音と共に先生の声が聞こえて、顔を離した。
先生からのアドバイスが始まったんだけど、、
先生が話してて、聞かなきゃまずいのに玲於くんから目がはなせない。
目を合わせてないんだけど、先生の方を向けない。
・・・その通りだった。
玲於くんのこと、ただただ優しい人だと思ったけど、
私には理解できない、大人な人だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!