第29話

終演
807
2022/04/12 16:02
西山宏太朗
西山宏太朗
(ふぅー。シャワー気持ちよかった。)
僕は呑気に風呂場から出てきた。



江口さんはソファでケータイを見ていた。




いつもはゲームをしているのに、今日は調べ物をしていた。


パイセンはまだ僕が出てきたことに気付いてないのかな?
西山宏太朗
西山宏太朗
パイセン!服ありがとうございます!
ふがぶかの服を見せつけるように、江口さんの前でクルクルと回った。
江口拓也
江口拓也
おー!いいじゃん。
かわいい。
西山宏太朗
西山宏太朗
かわいいでしょー?
江口拓也
江口拓也
かわいいよw




僕は上機嫌だ。



かわいいもいっぱい言ってもらったし。
幸せだ。



これが僕の幸せだよ。



どうしてみんなして僕の幸せを奪おうとしてたんだろ。



不思議だなぁ。
江口拓也
江口拓也
…宏太朗。
西山宏太朗
西山宏太朗
なんです?
江口拓也
江口拓也
ちゃんと綺麗になった?
トマトケチャップ全部取れた?
パイセンは振り向かない。
西山宏太朗
西山宏太朗
取れましたよ?
なんでそんなこと…
江口拓也
江口拓也
本当に?
俺だけの…俺だけの綺麗な宏太朗に戻った?
西山宏太朗
西山宏太朗
え?なに言ってるんですか?
僕はずっと江口さんのですよ?
なにを言ってるんだ?



返り血も全部綺麗に落とした。



綺麗な…僕?



江口さんだけの僕だよね?



ずっと、ずっと。



これまでも。



これからも。
西山宏太朗
西山宏太朗
なに言ってるんですかぁ。
江口さんだけの宏ちゃんですよ。
江口拓也
江口拓也
だよね…。
俺だけの、俺だけの宏ちゃん。
西山宏太朗
西山宏太朗
江口さんだけの宏ちゃんですよ。
江口拓也
江口拓也
じゃあ…
西山宏太朗
西山宏太朗
江口拓也
江口拓也
じゃあ、もう…いいよねっ!







グサッ
















西山宏太朗
西山宏太朗
………………………え?
江口拓也
江口拓也
ねぇ、俺、頑張って我慢したよ?
西山宏太朗
西山宏太朗
…は?
なにこれ。



なにが起こってるの?



なに?
江口拓也
江口拓也
褒めて…くれないの?
江口さんは悲しそうな顔をする。



でも僕はそれどころじゃない。



刺されてるんだから。
西山宏太朗
西山宏太朗
褒め…る?
江口拓也
江口拓也
うん。褒めてよ。
西山宏太朗
西山宏太朗
え?えらい…ですね、ぱいせ、ん
江口拓也
江口拓也
ありがとう😊
なんで?



なんでこーなってるの?
江口拓也
江口拓也
ねぇ宏ちゃん…。
愛してるよ?
西山宏太朗
西山宏太朗
………え?
江口拓也
江口拓也
俺ね、宏太朗が思ってるよりも愛してるの。宏太朗が他の人と喋ってるの見てるのも嫌。他の人に笑顔向けてるのも嫌。ネイル見せてるのも嫌だし、電話してるのも嫌。俺以外の人に甘えてるのも嫌だし、俺の以外のやつの服着るのも嫌。ましてや返り血なんて…。宏太朗は俺を騙せるとでも思ったの?
西山宏太朗
西山宏太朗

違っ、そんなわけじゃ…
返り血がバレてる。



ヤダヤダ。



言わないで。



お願い。
江口拓也
江口拓也
返り血なんて…。
宏太朗が汚れちゃうでしょ?
宏太朗は俺のなのに…。
宏太朗は綺麗でいなくちゃいけないのに。
だから、だから俺が、綺麗にしてあげる。
そう言った途端、僕は激しい痛みを感じた。
江口さんから借りた真っ白な服が、どんどん赤く染まっていく。



真っ赤に。



真っ赤っかに。
江口拓也
江口拓也
宏太朗。愛してる。愛してるよ。
狂気じみた笑みを浮かべながら、江口さんはひたすら僕に切り傷を作る。
まるで服の染色作業をしているように。



楽しそうに。丁寧に。
西山宏太朗
西山宏太朗
…グフッ
口からも赤い血が吐き出された。
江口拓也
江口拓也
…おっと。
江口さんの口の横に着いてしまった。


西山宏太朗
西山宏太朗
ぁ…ごめんな、ごめんなしゃい…
江口拓也
江口拓也
なんで謝るのさ?
ペロッ
西山宏太朗
西山宏太朗
あ…
江口拓也
江口拓也
宏太朗の血液ほど、綺麗なものはないよ。
ん…おいし。
この人、血、たべた。
西山宏太朗
西山宏太朗
おいしく、ない、でしょ?
江口拓也
江口拓也
ん?おいしーよ?
そう言って、僕の体に作った傷を舐め始めた。
西山宏太朗
西山宏太朗
んっ、いたっ…い。
やめて、よ。
ペロッ。ペロッ。
西山宏太朗
西山宏太朗
っかは。やめっ、ほんと、むり、だから。
僕の体が叫び出す。
江口拓也
江口拓也
ん。おいし。
本当おいしーよ。宏太朗。
西山宏太朗
西山宏太朗
だめっ、だってば…
痛い。痛いです江口さん。



そう言いたい。



言いたいのに、口から言葉が出ない。
江口拓也
江口拓也
ねぇ?宏太朗。
僕の服はもう真っ赤っか。



江口さんの口元も真っ赤っか。



もう、何もかもが赤に染まっている。
江口拓也
江口拓也
綺麗だよ。
西山宏太朗
西山宏太朗
…!
そんな言葉…そんな言葉望んでない。



この状況が、嘘だって言ってよ。



お願い。



嘘だと言って。



だって、だって僕、江口さんのために頑張ったのに。



こんな結末、ヤダ。
西山宏太朗
西山宏太朗
や…だ。
江口拓也
江口拓也
やだ?なにが?
西山宏太朗
西山宏太朗
ま、だ、死にたく、ない。
江口さんの、ため、に、頑張ったのに
江口さんは口を開かない。
西山宏太朗
西山宏太朗
お願い…。も、やめて、
江口拓也
江口拓也
……





沈黙が流れた。
江口拓也
江口拓也
ごめん、ごめんね。
宏太朗。痛かったよね。
怖いよね。
最低な恋人でごめん。
西山宏太朗
西山宏太朗
あやまら、ない、で
西山宏太朗
西山宏太朗
僕、は、大丈夫、だから
江口拓也
江口拓也
でもね、宏太朗。
な、に?
江口拓也
江口拓也
…俺、宏太朗が欲しくてたまらないの。













グサッ
西山宏太朗
西山宏太朗
…は?
江口拓也
江口拓也
宏太朗を愛していいのは俺だけだし、宏太朗を綺麗にしていいのも俺だけ。汚していいのも俺だけだし、泣かせていいのも俺だけ。全部、全部俺だけの宏太朗。俺だけの…ね?
そうでしょ?

























僕はもう、考えることをやめた。
西山宏太朗
西山宏太朗
僕、は、江口さんだけの"モノ"。
江口拓也
江口拓也
ふふっ。そうだよ。
これからも、ずーーっと、ずーーーっと一緒だよ?
宏太朗。
西山宏太朗
西山宏太朗
…はい。
江口拓也
江口拓也
愛してるよ、宏太朗。







僕は「真っ赤な愛」を感じながら、深い深い底へと落ちていった。
















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主
はぁい!主です!
お疲れ様でしたー!
…と言いたいとこですが、今度は続きで江口さんsideを書きます!
イェーイ!

まぁ、本編はここまでですね、
多分。

真相や真実を知りたい方はこの続きもよろしくお願いします!

なぜ江口さんから遠ざけようとしていたのか。

ざっくりわかってると思いますが、そーゆーとこも細かく書いていきます!

宏太朗さんを○したその後も書こうと思ってますので、是非とも宜しくお願いします!

ここまでのことで、コメント等いただけると嬉しいです。

さぁ、最終回?長くなってしまいましたが、本当にありがとうございました!

これからもよろしくお願い致します!

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