·····急に駆け出して、岩泉さんに悪かったな。
でも、これ以上あの場にいたら、私の決意も
揺れるから·····
烏野のバスに近づくにつれ、みんなが
駆け寄ってきた。
謝ると、2年生組は安心した顔を見せてくれた。
3年生も駆け寄ってきて
澤村先輩にはガシッと両肩を掴まれ、
菅原先輩には頭を乱暴に撫でられた。
突然のダブルアタックにギョッとした。
·····なんかすごく想像できる。
その後、1年生にも問い詰められて、たった数分いないだけだったのに、こんなにも心配してくれたんだと
思うと嬉しくなった。
けど·····
そろそろ校門に着くなと思った時、門に寄りかかっている人がいた。
さっきまでニコニコしてたのに、急に真剣な顔をする及川さん。
月島くんを見て言い放つ。
やっぱり、レシーブが弱いのバレてる
それから、影山に人差し指を向けて
これはもう宣戦布告としか言いようがない。
ぐっと口を引き締めていると、及川さんが
こっちに来て、
と耳打ちされた。
·····そんな目、してた?
あ、よかった·····不快にさせてなくて。
そう思ってると、後ろから及川さんの背中がはたかれて、及川さんがよろめいた。
陽音は烏野に頭を下げる。
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なんやかんやあって、高校へ戻りました。
体育館に集まり、そういえばと思った。
この際だから武田先生に聞いてみた。
武田先生は明るく話してくれて
そういう武田先生はすごく頼もしく見えた。
私は体育館のモップがけをしてる1年生、倉庫の整理をしてる2、3年生を一通り見て、そしてまた先生を
見る。
バスの中で辞める話をいつ言おうか考えてたけど、
辞めるのは無責任だと思った。
でも、こんな自分の気持ちを整理してないまんま
じゃ、この先、迷惑をかける。
私の出した、唯一の結論·····
理由·····
やっぱり、話さないとダメだな
先生は少し考え込んで、また聞いてきた。
·····本当は、そうしたいよ。
武田先生は優しい。とても。
ごめんなさい。私の事情なのに。
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澤村先輩、菅原先輩、田中、日向、影山と、いつものメンバーで坂を下る。
·····そういえば、誰かの知り合いに白鳥沢行った
息子さんいたって聞いたな。お父さんだっけ、
お母さんの知り合いだっけ?
1人考えに更けてると、「烏養」という言葉が
聞こえた。
烏養監督は、無名の烏野を全国大会まで導いた
名将だと、お父さんから聞いたことがあった。
菅原先輩は肩をすくめて言った。
結構なお年なのかな
また考えに更けてると、いつの間にか田中が
私の顔の前で手をヒラヒラと振っていた。
日向に指摘されて、やっと現実に戻された。
10mくらいは過ぎていた。
珍しく影山にも心配された。
前にもあったような感じで足早にUターンする。
振り返り際、みんなの困ったような、心配そうな顔が頭の中で再生される。
·····優しくされる資格なんて、私にはないのに。
ギュッと心臓が掴まれたような痛みがした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。