お昼休み
いつも通り陽音が2組に来た。
私の席と近くの席をくっつけあってお弁当を食べる。
陽音が大好きな冷凍の唐揚げを食べながら
聞いてきた。
陽音が不安な顔をするのも分かる。
話し終えると、陽音はガバッと机に突っ伏していた。目の前でいきなりだったから、ギョッとした。
ジタバタしてる陽音を見て、静かにツッコミを
入れる。
ケラケラ笑っている陽音につられて、私も軽く笑う。
また静かに話し出した私を見て、陽音は笑うのをやめて、「そっか」ってそっと言ってくれた。
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そして、放課後。
見学の時に清水先輩から一応もらった
入部届けを持って体育館へ。
ここ最近よく通る体育館への渡り廊下にさしかかると、日向くんと影山くんがグラウンドへ行こうとしていた。
ついタメ口で話し出してしまい、慌てて
敬語を付け足す。
私の声が届いたのか、日向くんと影山くんはわざわざ戻ってきてくれた。
と、日向くんは笑顔で、影山くんもどこか
ぶっきらぼうにそう言った。
·····確かに、敬語ばかりじゃ相手もなかなか
話しずらいよね。
うぅっ。慣れない·····
確認するように言うと、2人は心無しか嬉しそうな表情を浮かべていた。
さっきの私の質問に元気に答える日向。
あ、明日の試合まではまだ体育館、出禁なんだ·····
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1時間くらい、影山はスパイクを日向に向けて打っていて、日向はレシーブを·····が繰り返し。
芝生の上で「バレー部ノート」に日向の
弱点と改善点を書いている私。
影山は·····申し分ないくらい上手。
ただ、ちょっとカリカリしてるかな·····
日向は今までのレシーブよりもしっかりと
影山に向けて返していた。
私も、気になるな·····相手の1年。
きっと背が高いんだろうなぁ
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菅原side
新しい1年、すげー身長高かったなぁ·····
一緒にポールを持っている田中が、ブツブツと何やら言っていた。
いつものようにツッコむと、田中は少しばかり
シュンとしていた。
うちの部員、けっこー濃い性格多いからなぁ。
男と話すの、苦手そうだし·····
先に用具室で片付けていた成田が、田中の話したことを聞いていたらしく、教えてくれた。
日向たち見てたってことは、ノートに書き込んでたりしてんのかな。早朝練の時みたいに。
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くしゃみが出て、腕をさする。
もう外は真っ暗になっていた。
早朝練の時よりも寒い。日向たちは半袖だった。
風邪ひいたらいけないと思い、まだ続けている2人に
声をかける。
影山がトスを上げ、すかさず日向が反応する。
もう少しで届くところに、日向の前に手が伸びた。
見知らぬ人が来て、慌てて立ち上がり側へ駆け寄る。
すごく身長高いメガネ男子と、そばかす顔の男子。
見かけない顔·····1年生?
つい思ったことを言う、私の悪いクセその2。
慌てて口を閉じる。
そばかすの子が私に気付いてお辞儀する。
メガネ男子は私には目もくれずに影山に話しかけて
いた。
ツッキーと呼ばれてる人が一瞬こっちを見て、すぐにまた影山と向かい合う。
·····王様?って聞いたことある。どこでだっけ·····
·····あ、北川第一の試合の時、陽音が言ってたやつだ·····"コート上の王様"
·····なんか、すごく嫌味ったらしく聞こえるのは
私だけ?
影山も何かを我慢してるように見える·····
私は1歩前に出て、影山とツッキーと呼ばれる人の間に立つ。自分でもこんな苛立つの初めてで、大人しい自分が相手にたてつくことなんてなくて、内心びっくりしていた。
じっと自分なりに睨んでいると、相手も少し驚いて、でもさっきと同様な無気力顔に戻る。
じとっと見下ろしてくるメガネ男子。
早口で言って、影山にもなにか言おうと思い振り向くと、スポーツバッグを持って帰ろうとしていた。
また嫌味ったらしく言うメガネ男子。
ポンポンと片手で、手のひらでボールを跳ねさせて
いると、日向が私の横をビュンと効果音が出そうな
ほどの勢いで通り越し、その勢いのまま高々く飛んで
メガネ男子が持ってたボールを奪った。
日向がビシッとメガネ男子を指さし、
堂々と言い放った。
最後の最後まで·····月島くんは嫌味ったらしい言葉を
言い、帰っていった。
山口くんは·····全然嫌な人とは思わなかったけど·····
私よりも悪そうだ·····
日向はボールを影山に突き出し、
それが合図だったかのように影山も肩にかけてた
スポーツバッグを下ろした。
さっきので火がついちゃったかな·····
腕時計を見ると、もうすぐ20時を指そうとしていた。
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菅原side
片付けが終わり、田中とグラウンドへ行ってみると、まだ日向と影山が練習していた。
その横に座り、延々とラリーを見ていた崎村さんも
目に入った。
欠伸をしてる田中を横目に、崎村さんを見る。
思った通り、大学ノートにシャーペンを
走らせていた。
·····そろそろ切り上げさせないとな
そう思い、田中を引っ張って3人の元へ足を運んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。