第7話

6話:感じ悪いな·····
330
2020/05/27 08:56
お昼休み
いつも通り陽音が2組に来た。
私の席と近くの席をくっつけあってお弁当を食べる。
陽音
陽音
男子と話すの、大丈夫?マネージャーって選手とよく関わるし·····
陽音が大好きな冷凍の唐揚げを食べながら
聞いてきた。
陽音が不安な顔をするのも分かる。
怜央
怜央
まだ全然話せてないんだけど·····でも、一生懸命やってる人のサポートをしたいって思って。それと·····
怜央
怜央
陽音が、バレーボールの良さを
教えてくれたから、もっと近くで見たいなって·····
話し終えると、陽音はガバッと机に突っ伏していた。目の前でいきなりだったから、ギョッとした。
怜央
怜央
は、陽音?
陽音
陽音
怜央·····成長したね!
お母さんは嬉しいよーっ
ジタバタしてる陽音を見て、静かにツッコミを
入れる。
怜央
怜央
私はいつから陽音の子どもになったの
陽音
陽音
っあっはっは!怜央のツッコミやっぱ
面白いわー
ケラケラ笑っている陽音につられて、私も軽く笑う。
怜央
怜央
それとさ·····お母さんが、看護師だったから·····軽いケガの処置はできるし、
役に立ちたかったのもあるの
また静かに話し出した私を見て、陽音は笑うのをやめて、「そっか」ってそっと言ってくれた。
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そして、放課後。
見学の時に清水先輩から一応もらった
入部届けを持って体育館へ。

ここ最近よく通る体育館への渡り廊下にさしかかると、日向くんと影山くんがグラウンドへ行こうとしていた。
怜央
怜央
日向くん、影山くん、どこ行くの?
ですか
ついタメ口で話し出してしまい、慌てて
敬語を付け足す。
私の声が届いたのか、日向くんと影山くんはわざわざ戻ってきてくれた。
日向&影山
先輩。敬語じゃなくてもいいッスよ!
と、日向くんは笑顔で、影山くんもどこか
ぶっきらぼうにそう言った。
怜央
怜央
え、でも·····
日向翔陽
あと、"くん"呼びもナシで!
影山飛雄
先輩なんだし、堂々としてても悪くないっす。
·····確かに、敬語ばかりじゃ相手もなかなか
話しずらいよね。
怜央
怜央
·····分かった。日向、影山···でいい?
うぅっ。慣れない·····
確認するように言うと、2人は心無しか嬉しそうな表情を浮かべていた。
日向翔陽
俺らこれから外で練習するんです!
さっきの私の質問に元気に答える日向。


あ、明日の試合まではまだ体育館、出禁なんだ·····
怜央
怜央
あの、私も行ってもいい?邪魔はしないから·····
日向翔陽
じゃ、行きましょう!
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影山飛雄
おら、もっと足動かせ!
日向翔陽
うっ·····ぐうっ
1時間くらい、影山はスパイクを日向に向けて打っていて、日向はレシーブを·····が繰り返し。
怜央
怜央
(日向はレシーブを強化、だね)
芝生の上で「バレー部ノート」に日向の
弱点と改善点を書いている私。
影山は·····申し分ないくらい上手。
ただ、ちょっとカリカリしてるかな·····
日向翔陽
·····そういや、相手の1年ってどんなやつなのかな?
日向は今までのレシーブよりもしっかりと
影山に向けて返していた。



私も、気になるな·····相手の1年。
きっと背が高いんだろうなぁ
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菅原side
新しい1年、すげー身長高かったなぁ·····
田中龍之介
なーんか気に入らないんすよね。
あの新1年。
一緒にポールを持っている田中が、ブツブツと何やら言っていた。
菅原孝支
お前、初対面のやつだいたい気に入らないじゃん。ほら、あれだろ、そういう
習性だろ
いつものようにツッコむと、田中は少しばかり
シュンとしていた。
田中龍之介
ところで、今日は崎村さん、来てないっすね
菅原孝支
そうだな·····
うちの部員、けっこー濃い性格多いからなぁ。
男と話すの、苦手そうだし·····
成田一仁
崎村さん、外で日向たち練習してるの、見てましたよ?
先に用具室で片付けていた成田が、田中の話したことを聞いていたらしく、教えてくれた。
菅原孝支
そうなんだ
日向たち見てたってことは、ノートに書き込んでたりしてんのかな。早朝練の時みたいに。
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怜央
怜央
クシュッ
くしゃみが出て、腕をさする。
もう外は真っ暗になっていた。
早朝練の時よりも寒い。日向たちは半袖だった。
風邪ひいたらいけないと思い、まだ続けている2人に
声をかける。
怜央
怜央
もう暗いし、次、1本やったらおしまいにしよっか
影山飛雄
うっす。·····行くぞ、後ろだ!
日向翔陽
おうっ
影山がトスを上げ、すかさず日向が反応する。



もう少しで届くところに、日向の前に手が伸びた。
月島蛍
·····へぇ、ほんとに外でやってる。
君らが初日から問題起こしたっていう
1年?
山口忠
げっ、Tシャツ?寒っ·····
見知らぬ人が来て、慌てて立ち上がり側へ駆け寄る。


すごく身長高いメガネ男子と、そばかす顔の男子。
見かけない顔·····1年生?
怜央
怜央
もしかして、入部予定の人ですか?
つい思ったことを言う、私の悪いクセその2。
慌てて口を閉じる。
山口忠
あ、はい·····あの、先輩·····ですよね?
そばかすの子が私に気付いてお辞儀する。
メガネ男子は私には目もくれずに影山に話しかけて
いた。
怜央
怜央
ねぇ、あのお友達、身長いくつですか?
山口忠
ツッキーは188cm·····
月島蛍
何、山口が自慢するように言ってんの
山口忠
ごめん、ツッキー!
ツッキーと呼ばれてる人が一瞬こっちを見て、すぐにまた影山と向かい合う。
月島蛍
さすが王様。すごい自信だね
影山飛雄
おい、その呼び方っ·····
·····王様?って聞いたことある。どこでだっけ·····



·····あ、北川第一の試合の時、陽音が言ってたやつだ·····"コート上の王様"
月島蛍
いいじゃん王様。すごいかっこいいよ、王様
·····なんか、すごく嫌味ったらしく聞こえるのは
私だけ?


影山も何かを我慢してるように見える·····
怜央
怜央
ちょっといいですか。さっきから王様
王様言うのやめてあげて下さい
私は1歩前に出て、影山とツッキーと呼ばれる人の間に立つ。自分でもこんな苛立つの初めてで、大人しい自分が相手にたてつくことなんてなくて、内心びっくりしていた。
じっと自分なりに睨んでいると、相手も少し驚いて、でもさっきと同様な無気力顔に戻る。
怜央
怜央
どうして影山が"コート上の王様"なんて呼ばれてるか知らないですけど、彼も彼なりに努力しています。
月島蛍
·····誰ですか?
じとっと見下ろしてくるメガネ男子。
怜央
怜央
2年の崎村怜央です。邪魔するだけなら帰って下さい
早口で言って、影山にもなにか言おうと思い振り向くと、スポーツバッグを持って帰ろうとしていた。
月島蛍
逃げんの?王様も大したことないね
明日の試合も王様相手に勝てちゃったりしてー
また嫌味ったらしく言うメガネ男子。
ポンポンと片手で、手のひらでボールを跳ねさせて
いると、日向が私の横をビュンと効果音が出そうな
ほどの勢いで通り越し、その勢いのまま高々く飛んで
メガネ男子が持ってたボールを奪った。
怜央
怜央
(やっぱり速い·····あ、あとでメモ·····)
日向翔陽
王様王様ってうるせぇ!俺もいる!試合でお前の頭の上打ち抜いてやる!
日向がビシッとメガネ男子を指さし、
堂々と言い放った。
日向翔陽
つーか、お前らどこのどいつだ!
月島蛍
·····1年4組、月島蛍
山口忠
俺は山口忠
月島蛍
王様のトス、楽しみにしてるよ
最後の最後まで·····月島くんは嫌味ったらしい言葉を
言い、帰っていった。
山口くんは·····全然嫌な人とは思わなかったけど·····
怜央
怜央
·····感じの悪い1年だね
私よりも悪そうだ·····
日向翔陽
ホントですよ!おい影山、何帰ろうとしてんだよ!まだやるぞ!
日向はボールを影山に突き出し、
それが合図だったかのように影山も肩にかけてた
スポーツバッグを下ろした。


さっきので火がついちゃったかな·····
腕時計を見ると、もうすぐ20時を指そうとしていた。
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菅原side
片付けが終わり、田中とグラウンドへ行ってみると、まだ日向と影山が練習していた。
その横に座り、延々とラリーを見ていた崎村さんも
目に入った。
菅原孝支
あいつら、いつまでやってんだ·····
田中龍之介
さぁ·····俺、眠い·····
欠伸をしてる田中を横目に、崎村さんを見る。
思った通り、大学ノートにシャーペンを
走らせていた。
·····そろそろ切り上げさせないとな
そう思い、田中を引っ張って3人の元へ足を運んだ。

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