第7話

突然
998
2021/02/03 22:15

ーー

なぁ、夏川さんって好きな人おるん?

ーー










それは、あまりにも突然だった。


相変わらず綺麗な短文。


でも、いつもと違う。



『好きな人』?



これは、少女漫画でよくあるシチュエーション。


相手に好きな人を聞かれ、主人公は自惚れてしまうという場面。


あんなの馬鹿らしい、私ならそんな自惚れたりしない______





そう思っていた。



いざ目の前にすると、主人公の気持ちが痛いくらいによくわかる。


もしかしたら、あの人は私のこと__________



期待したくて、したくない。


そんな矛盾した考えが脳内を駆け巡る。


私は、筆箱からボールペンを取り出して返事を書いた。




ーー

いないですよ笑。


いきなりですね。


北先輩はどうなんですか?


気になるなぁ〜


ーー




うん、我ながら良い文章。


私の好意は、きっとこれならバレない。



ほんのちょっと嘘をついた。


バレるのが怖くて。



でもいつか、伝わると良いな。




私の、初めての気持ち__________。









??「…夏川」


あなた「わっ!」



後ろから声をかけられ、思わず肩が浮く。


そこにいたのは、侑くん…ではなく、双子の治くん。



あなた「治くん、どうしたの?ってかここ2組…」


治「ツムに用があんねん」


あなた「あー、侑くんならさっき出て行ったけど…」


治「嘘やって、俺がほんまに用があんのは夏川や」


あなた「わ、私!?」



何か悪いことしたかな、前のこと、怒ってるかな?


あなた「ご、ごめんなさいっ」


治「は?何謝ってんねん。俺怒っとらんよ」


あなた「…え?」


治「…これ、」






彼が差し出してきたのは、A4の一枚のチラシ。




『夏祭り 7月26日、開催!』







治「なぁ、夏川………これ、一緒に行かへん?」



遠慮がちに聞いてくる治くん。


夏祭り、か…。



怒ってるわけじゃなかったんだ、良かった。




あなた「うん、行く!楽しみだね!」



治「…おん」



彼は分からないくらいに小さく微笑む。




あなた「可愛い…」


治「は?」


あなた「あっ、」


治「連れて行かんぞ?」


あなた「やです!楽しみだなー!!」



大袈裟に声を出すと、彼は満足そうに帰って行った。



あなた「これからは可愛いって言わないようにしよ…」


??「何をや?」


あなた「わーもう!ほんっとに!!」



双子って何なの!?


治くんと同じ現れ方をした侑くんは、私の手元にあるチラシを覗き込んだ。



侑「…サムと行くんか?」


あなた「うん!」


侑「言っとくけど、これ俺も同伴やで?」


あなた「そうなの!?余計楽しみ!」


彼を見上げ、ニコッと笑いかける。


チラシを覗き込んでいた彼と、ぱちっと目が合う_________








侑「近……」







あなた「ご、ごめん…!」



バッと視線を下に戻す。


顔が熱い。


やば、バレてないかな……。









侑「…やっと意識してくれたやん」





その言葉の意味が、私にはよく分からなかった。












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