長い長い夏休みが終わった。
私の教室は、「宿題終わったー?」「この前プールでさぁ!」と、楽しそうな声が行き交っている。
あの時__________北先輩に誤解された時。
もっと強引に止めて、気持ちを伝えればよかった。
もしそうしてたら、今、こんな虚無感に襲われていない__________
侑「……あなた!おはよーさん」
あなた「わあっ!?」
肩をポン、と叩かれ、思わず飛び上がった。
あなた「おはよ…侑くん。この前はありがとう」
侑「ん?あー、こちらこそ。めっちゃ楽しかったで。あと……ちょっと気になる事があんねん」
あなた「気になる事?」
侑「北さんがな、いつもと違うねん」
あぁ、その名前を今聞きたくなかった。
北先輩がいつもと違うこと、もう原因は分かっている。
あの時、私が治くんといたからだ。
治くんは稲荷崎の大切なウイングスパイカーで、その存在をどこかの女に取られた。
そんな事があったら、バレーを頑張っている北先輩も怒るはず。
語彙力がないから説明しづらいけど、簡単に言えばそういう事なのだ。
侑「……で、あなたがなんか知らんかなって考えたんやけど…」
あなた「…ごめん。分かんないや」
ごめんね。今は喋りたくないの。
もう一言でも発したら、泣いてしまいそう……。
好きな人に、嫌われちゃった。
恋する人からすれば、それは絶対にあってほしくない事。
でも、私は……それに直面した。
もう私は、彼に近づいてはならないのだ。
あなた「………」
侑「バカか?」
あなた「…はい?」
いきなりバカとか言います?普通。
侑「北さんがおかしいんがお前のせいなんて事、とっくに知っとるわ!ただ、お前が思っとる理由とちゃうで」
あなた「違うの……?嫌われてない…?」
侑「はぁ?何言うてんねん。お前を嫌う奴はセンス悪すぎやって俺が怒ったるわ。なんせ、俺とサムと角名が好きになった奴やで?めっちゃいい女やん」
ベタ褒めされて、頬がポッと赤く染まった。
そして、近くで話を聞いてしまった女の子が________
「ええええ!?侑くん、この子のことが好きなの!?」
生憎その声はかなり大きくて、クラス中に響き渡った。
皆がこちらに注目し、コソコソと話を始める。
見られてる……皆から?
頭がぐらぐらと揺れる。気持ち悪い。
あなた「はっ、はっ……」
息がうまく出来ない。
皆の視線が
怖い。
やだ、見ないで。息が、苦しい……っ!
??「大丈夫や」
そっと、肩に大きな手が触れた。
??「保健室行こ」
??「早く行くで」
今度はまた違う声。
マスク越しに口を押さえながら後ろをチラリと見ると……そこには、私を好きだと言ってくれた3人組。
角名くんが発作を起こした私をゆっくりと抱え込み、そして抱き上げた。
治「お前いいとこ取りやん」
侑「角名もお前にだけは言われたくないやろ」
文句を言い合いながら、彼らは、私を保健室まで運んでくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。