体育館の中からは、シューズの擦れる音やボールの音が聞こえてくる。
北先輩って、侑くんと同じバレー部だったのか…。
重そうなドアを、踏ん張って開ける。
あなた「失礼しま…」
侑「あなた!あ、ヤベっ!!」
治「バカっ!」
双子の治くんが注意したときには、すでに遅く…。
ボールは、いつのまにか目の前にあった。
目の前に、影ができる。
その影は、ボールを突き飛ばして…
そのまま、地上に降り立った。
??「…あの双子、良い加減にしてくれへんやろか」
あなた「…え」
目の前に立っている、背の高い男の人。
侑くんよりは低いけど、威厳を感じて大きく見えてしまう。
侑「すんまへん、北さん…!」
北「謝んのはこの子にやで」
北、さん?
この人が、北先輩!?
北「ん?そのノート…」
あなた「あっ…夏川、です!どうも…」
北「ペンありがとう」
無表情のまま言われたお礼。
でも、それがちょっと嬉しかった。
気づけば、双子は私の近くにいた。
侑「ほんまにごめん!」
治「もっと警戒心持てや夏川」
侑「その言い方ないやろ!」
治「何や、ツムが女子庇うなんて珍しいな。あ、まさか夏川のこと」
侑「ちゃうわ!クラスメイトやからや!」
北「2人とも」
宮兄弟「…スンマヘン」
あなた「いやっ、全然大丈夫、」
北「夏川さん、気にせんでな」
あなた「いえ…北先輩、庇ってくれてありがとうございます」
ペコリと彼にお辞儀をする。
侑「…なぁあなた、お前、何でマスクしてんの?風邪…じゃないよな」
うげ、。
触れないで欲しいんだが。
あなた「いや、あの、これは、」
顔に熱が集まっていく。
??「…女子には触れないで欲しいこともあるんじゃないの」
新しく聞く声。
侑「…角名!」
す、な…?
私の後ろに立っていたのは、吊り目の男の人。
あなた「あ…角名くん」
隣のクラスの子だ。
喋ったことないけど…。
あなた「…ありがとう。角名くん」
角名「ん」
それだけ言って去っていく角名くん。
私も、そろそろ帰ろうかな…。
あなた「あの、失礼しました」
北「あ、うん、気ぃつけてな」
あなた「はい」
それだけの会話をして、私は体育館を出た。
治「…ツム、やっぱりお前アイツのこと好きなんちゃう?」
侑「んなわけあるかい!まさかサムこそ好きなんちゃう!?」
治「…そのまさかやけどな」
侑「嘘やん」
治「嘘ちゃうわ。俺が好きになったんやから、お前も好きかな思たんやけど」
侑「…俺、お前に嘘はつけへんのやな」
北「…ほら、早よ準備せぇ」
双子「スンマヘン」
ーーーーーーーーーーー
読んでくださりありがとうございました!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。