彼らの計らいにより2人きりになった私と北先輩は、プール内のお店の行列に並んでいた。
さっきから、私たちの間に会話はなくてどうも気まずい。
チラリと彼の顔を盗み見る。
侑くんたちほど背は高くないが、やっぱり体つきは男の人だなーって感じがする。
切れ長だけど大きな目と、キュッと結んだ薄い唇。
そういえば、稲荷崎高校のバレー部のファン、北先輩のファンは見たことないな…。
何でだろう、こんなにカッコいいのに。
……って、バカバカ、自分で言っときながら顔赤くしてんじゃないよ。
北「…夏川さん」
あなた「あわっ、はい!」
北「交換ノート、今持っとる?」
あなた「あ、はい!バッグの中に…」
北「後で貸してくれんかな。書きたいこと、あんねん」
あなた「はい!」
かきたいことって、何だろう…。
そこに気になりつつ、私は看板のメニューをみた。
あなた「皆、何食べるか聞いてこなかったですね。ホットドッグ皆で食べます?おすすめみたいですし」
北「…俺は、おにぎりにするわ」
あー、うん。北先輩らしい。
北「…あと、もう一つ」
あなた「もう一つ?」
北「………夏川さん、下の名前で呼んでも良え…?」
あなた「あっ、はい!…って、はい!?」
し、下の名前!?
そんなの、呼ばれたら倒れちゃうよ!
でも、…。
こんな機会、もう二度とないと思う。
あなた「…はい。ぜひ」
北「……あなた。何か、変な感じやな」
えへへ、と笑う無邪気な彼に、顔が急激に熱くなった気がした。
こんなの、ずるい。
好きでもない子に…自分のことを好きな子に、こんな笑顔を見せるなんて。
あなた「…何で、いきなり名前呼びなんて…」
北「んー…侑が、下の名前で呼んでたからかなぁ。越えられた気がして、ムカついてん。子供っぽい理由やろ(笑)」
ほら、また。
反則ですよ、北先輩。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。