あなた「…あ、角名くん」
角名「ん」
彼は、稲荷のところでずっと待ってくれていたようだった。
腕組みをして、稲荷に寄りかかっている。
角名「…帰る?」
あなた「うん…」
あの小事件があった後だし、少し気まずい。
あなた「…双子君達は?」
角名「帰っとけって言った。2人で帰りたかった」
もう、すぐ角名くんはそんなことを…!
私達は、一定の距離を保ったまま歩き出す。
あなた「…私、告白した」
角名「…うん。そうだろうなって思った」
あなた「…伝わんなかった」
角名「え…」
その時、振り返った彼の目が。
切なくて、優しくて……
あなた「っ…つたわらなかったよ…」
涙が溢れた。
初めてあんなに勇気を出した。
私を守ってくれていたマスクを取るにも、あんな緊張入らなかった。
でも、伝わらなくて。
花火と被ったのは偶然だけど、再度伝えられなかったのが悔しい。
角名「…また言えばいいのに」
あなた「無理だよ」
角名「俺は言える。夏川、好きだよ。大好き」
あなた「ちょ、」
角名「お前のことが好きな人に、相談とかすんな」
あなた「!!」
角名「…初めて綺麗だと思った」
彼はすっと目を細める。
角名「純粋な…夏川のその濁らない目がずっと好きだった」
あなた「どういうこと…?」
角名「接していくうちに、その目は夏川の中身をまんま映しているって分かった。真っ白で、どこかに悩みを抱えている」
角名「…ほら、俺はもう全部言ったよ。次は夏川の番」
あなた「私の…?」
角名「…俺みたいに、気持ちを伝えるんだよ」
…!!!
角名「これからも、好きでいさせてね」
あなた「…うんっ…!ありがとう…!」
あぁ、枯れたと思ったのに。
角名くん、ありがとう。
君のおかげで、また頑張ってみようかなって思ったよ_____________
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!