その女の子は、無礼も知らずズカズカとこちらにやってくる。
その容姿に、見惚れた。
金髪をくるりとカールしたロングヘアに、極限まで短くしたスカート。
さらに完璧すぎる化粧という、まるでお人形さんみたいな見た目。
女の私からしても、彼女の見た目は完璧であった。
あなた「えーっと…?どちら様で、すか?」
??「花崎あいら。私を知らんの?ありえへんわほんま」
花崎さんは初対面にも関わらずつっけんどんな態度をとってくる。
私のちょっと苦手なタイプ…かもしれない。
でも、こんな美人さんが、私に何の用で…?
花崎「あなた……バレー部の方々と仲良いよね?」
その言葉を聞いた瞬間、サーッと血の気が引いていく感覚がした。
そう、稲荷崎の男子バレー部は、人気でモテる人達がかなり多い、と評判なのだ。
まぁ、私はもちろんそれが目的でつるんでいるわけではない(←逆につるまれている)。
彼らと距離の近い私をよく思わない人も少なくはないと思う。
あなた「それ、は、そうだけどっ」
花崎「私たちがどんな気持ちで居たと思ってんねん。どんなに努力をしても彼らには近づけへんかったたのに。何であんたは努力もせんで告白なんかされてんの!?」
その言葉に、心臓がドクンと跳ねた。
だって、公共の場で告白されたのは角名くんだけ。
侑くんと治くんは、電話で言われたから、誰にも聞かれてないはずなのに…。
あなた「何で、知ってるんですか…?」
そう聞くと、彼女はハッとして、バツの悪そうな顔をした。
花崎「…何でもない。とにかく、私はあんたがムカつくんや!私の好きな北さんまでとられて!!」
え……?
今度こそ、本当に血の気が引いた。
この可愛い女の子は、北先輩のことが好き。
地味で取り柄のない私も、北先輩のことが好き。
この紛れもない事実に、どう対応しようか。
いや……対応なんてできない。対抗策なんてない。
こんなに可愛い女の子に、私が勝てるわけないじゃん……。
諦めます。
そう言いたかった。
先に白旗をこちらからあげておけば、傷つくこともないかな、なんて思ったのに。
声が掠れる。やけに寒い体とは裏腹に、目頭は熱くなって、目の前が歪んだ。
花崎「北さんは私がもらうから。手、出さんでね」
あなた「……はい」
そう言わざるを得なかった。
あんなに好きと言ってくれて、でも応援してくれた人たちに申し訳ない。
私の初恋は、あっけなく終わったんだ。
私の小さな返事に、彼女は「いいわ」とだけ言うと、スマホを取り出し、誰かに電話をかけ始めた。
花崎「……おっそい!!早く来いよスナ!!」
あなた「…す、角名……?」
どういうこと……!?
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読んでくださりありがとうございました!
もう最終回まで近づいて来てますね…最後まで、よろしくお願いします!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!