角名くんに送ってもらったその日の夜。
私は浴衣も着替えずに、机の上のノートを開いた。
北先輩の短い返事でノートは終わっている。
ここに、『好きです』とでも書くかな。
いや………ダメ。
角名くんは、私の目を見て、はっきりとその言葉を告げてくれた。
今度は私の番。
角名くんみたいに、彼の目を見て、私の気持ちを告げるんだ。
ーーー
久しぶりの交換ノートですね
ーーー
なんて書いたら、いいんだろ…。
…気分転換でもするかな。
小さな巾着袋からスマホを取り出して、メッセージアプリを開いた。
『暇だから電話しない?』
相手は____________
『ええで!』
許可をもらい、早速電話をかける。
無料で通話できるなんて、世の中は便利になったものだよ。 ←何歳?
2コールもしないうちに、彼は電話に出てくれた。
あなた「…もしもし?」
侑『よ!さっきぶりやな。どーしたん?』
相手は侑くん。
メッセージアプリで繋がってる人、侑くんと治くんと角名くんしか居ないから。
治くんはめんどくさがりそうだったし、角名くんとはちょっと気まずいし、ということで、私が選んだのは侑くん。
スマホ越しに聞こえてくる彼の声は少し弾んでいるように聞こえる。
あなた「ちょっと雑談したいなーって…あっ、迷惑だったらいいよ!」
侑『迷惑なわけあるか。寝落ちするまで話すわ』
あなた「そうだねwまだお風呂入ってないけどww」
侑『入ってきたらええやん』
あなた「んー…そうだね。防水の袋に入れて、お風呂で話そう」
タオルとパジャマを用意し、風呂場に向かう。
あなた「ふぅー…落ち着く」
侑『ははっ、ホントに入ったんやなww映っとるで』
あなた「え!?」
スマホを慌てて確認するが、ビデオ通話は起動していないようだ。
侑『嘘やってww』
あなた「ちょっと!!」
侑『俺的には映っとってもよかったんやけど』
あなた「はぃぃ!?」
??『ツムー!誰と電話してんねーん!』
あ、治くんだ。
侑『ちょ、お前には関係ないやろ、わっ、ほんまにやめっ』
治『…夏川やんか』
あなた「あっ、治くん、やほー」
治『やけに反響してんな』
あなた「うん、お風呂だから」
治「は?」
侑『もーええやろ!!良い子はおねんねしといてください!!』
あなた「え、あの」
治『やかましいわ。俺も混ぜて』
侑『ダメー』
あなた「いいね、治くんも一緒に話そ!」
侑『あなたが言うんやったら…』
治『お前ほんま夏川に弱いな』
侑『やかまし!』
あなた「www」
私たちの楽しい夜更かしの会が始まった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!