第199話

after story 5
12,132
2022/03/13 13:43





いつの間にか頬には涙が伝い


手足は驚くほど震えていた


母親の全てが怖くて


母親という存在がトラウマだった


なのに、何故か溺れていく


それは私がこんな母親だとしても大好きだからなんだろう


相変わらず低脳なやつだな


と自分に言い聞かせた



母親「逆らうことも出来ないくせに」



そう言って振り上げられた手


昔の母と全く同じ顔だった



「なにしてんの」



母親ではない少し低い声に顔を上げる


やっぱりいつも助けてくれるのはこの人だった


だから好きになったんだ


舌打ちしながら母を睨みつけると


私の前まで来て頬に伝う涙を拭ったあと


そのまま抱きしめられる



渡辺「ごめん。怖かったよな」



荒い呼吸を整えながら必死に首を振る


そんな私を体の震えが収まるまで抱きしめ続けてくれた


背中をとん、とん、と叩いてくれる彼の腕の中はものすごく安心できた



渡辺「痛いところは」

『な、い』

渡辺「そんなわけねぇだろ」



そう言うと「ちょっと見るよ」と言って首元や顔を覗き確認してくる


不意に翔太の手が手首にあたり顔が歪む



渡辺「手首、?見せて」



そっと手首を掴むと「湿布あったかな」なんて言いながら頭をかく翔太



「ねぇ私いつまでこんなの見せられてればいいの」



急に母の声が響く


ビクッと震える私に「大丈夫だから」と言って頭を撫でると


すくっと立ち上がり母の前へ行く



母親「てか、あなた誰?」



そんな質問をガン無視して深く頭を下げる翔太



渡辺「お願いだからこれ以上あなたに関わらないでください。」



いつもの翔太からは想像できないような姿だった


母は軽く舌打ちすると



母親「どんな関係かは知らないけど、こんな役たたず早く捨てた方がいいわよ」



なんて鼻で笑い私のことを睨んだあと


やけに高いヒールの音を響かせて帰っていった


また私のところまで来てギュッと抱きしめたあと


優しく唇が重なる



渡辺「帰ろっか、みんなが心配してる」



そう言って軽々と私を持ち上げる


そんな翔太に私から抱きついた


そんな私を見て軽く笑うとまた頭を優しく撫でる翔太


いつもと少し違う感覚に


これもこれでいいのかと大好きな匂いに顔を埋めた














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