ベランダに出てラウールに電話をかけると
すぐに呼び出し音が切れる
_ラウ「秋くん!!!」
『何してんの?』
元気よく俺の名前を読んでくるラウールに
面白くなって、そんなことを聞いてみる
_ラウ「今ね、康二くんとテレビ見てた!」
『じゃあ、康二もいるの?』
_向井「おるで、楽しんでるん?」
『めっちゃ楽しいよ』
_向井「こっちはラウールが秋君秋君うるさくて困ってるわ」
_ラウ「康二くん、言わなくていいから」
『なにそれ、かわいい』
そんなことを言ってくれるラウールに
顔を見えないことをいいことに
口角が上がってしまう
_ラウ「明日何時ぐらいに帰ってくる?」
『うーん、どうだろう、夕方とかかな?』
_ラウ「わかった、待ってるね」
『なに、寂しいの?』
_ラウ「当たり前じゃん、」
『お土産もちゃんと買ってあるから』
それから、また電話越しでも嬉しそうな
声が聞こえてくる
後ろの方で阿部ちゃんの声がして
最後に「学校お疲れ様」とだけ伝えて
電話が切れた
部屋に戻り席に翔太の隣に座る
『わりぃ、ながくなった』
そう言いながら水を1口飲む
でも、明らかに水の味ではない
驚いてむせる俺を見て
ケラケラと笑っている翔太
『おい、翔太』
渡辺「なに、?」
『何じゃねぇって、お前これ絶対お酒だろっ、』
渡辺「あたりー」
やられた、警戒してたつもりが
完全に気を抜いた。
まだ笑っている翔太を叩いて
そんな翔太に呆れながらも
水を飲んで落ち着かせる
『翔太、ほんとにお酒だけはダメなの』
渡辺「ごめんって、」
『思ってねぇだろっ、』
渡辺「ごめんなさい!」
顔の前で手を合わせながら、謝ってくる翔太
そんな翔太に怒りながらも
1口飲んだだけなのに
もう体は既にぽかぽかと暖かかった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!