第27話

25.
20,670
2021/10/08 09:03





無意識なのか、痛いほどに俺の腕を握りながら


どんどん歩いてく翔太



『翔太っ、腕いたい、』

渡辺「あっ、ごめん、」



人通りの少ないところで止まってから


パッ、と腕が離される



田中「まあ、一旦落ち着け」

渡辺「いや、めっちゃ腹立つんだけど」

『嫉妬だと思えば可愛いじゃん』

渡辺「どこがだよ」



なかなか怒りが収まらない翔太に


嬉しいような、


少し複雑な気持ちになる



田中「じゃあさ!昼食べよ!昼!!」



樹の提案に賛成して


翔太の腕を掴み無理やり


フードコートに連れていく


席について、翔太が席を外せば


面白そうな顔をしながら


俺の方を見る樹



田中「相変わらずだな」

『え?なにが?』

田中「翔太の秋への愛」

『なにそれ、俺だけじゃなくて誰にでもだよ』

田中「そろそろ、愛されてること自覚しないと翔太拗ねるぞ」

『だから、意味わかんねぇよ』



翔太は優しいから


別に俺じゃなくても


ああやって、怒ってくれるのは


目に見える



田中「それにしても凄かったな、さっきのカップル」

『そーだな、彼女さんの方樹の好きそうな見た目だったじゃん』

田中「お前舐めてんの?俺内面重視派だから」

『絶対嘘だろ』

田中「ほんとだし」

『例えば?』

田中「えー、なんか、ギャップとか秘密とかあって俺だけが知ってる。みたいなのは憧れるよね」

『へぇ、初耳』



予想外の答えに


少しだけドキリ、とする


でも、ただの自意識過剰だ



『昼からどこの店行く?』

渡辺「これみて」



そんな俺に見せてきたスマホ画面を


樹と一緒に覗けば


見事に遭遇情報がツイートされていた



『はっや』

田中「え?俺ら有名人?」

渡辺「かもな」

田中「がち?テンション上がるわ」



でも、バレた以上


ここにはいない方がいい気がした



『出るか、』

渡辺「そーだな」



せっかくの買い物もも


結局、午前だけで幕を閉じてしまった









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