第156話

154.
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2021/12/16 13:47





部屋に入り滝沢君の前に立つ


嬉しそうな顔と目が会って


何となくわかってしまった


「今日がSnow Manとして最後の日」


になるということが



『今日は何ですか、』



分かりきっている事だとしても


受け止めたくなかった。


声を震わせながらもそう聞く俺を


鼻で笑う滝沢くん



滝沢「分かってるくせに」



なんて言って、机から一枚の写真を出して


そのまま机の上に置く。



『え、』



目の前に置かれたその写真は


私と蓮がキスしている写真だった



『なんでっ、!』



頭がどうしてもついていかずに


置いていかれたまま、


ただただ、その場で固まる



滝沢「明日までにはシェアハウスから出ていくように」



呆然と立ち尽くす俺に


いつもと同じ声のトーンでそう言う



『退所ってことですかっ、』



帰ってくる返事なんてわかってるのに


分かっているから聞きたくなんてないのに



滝沢「当たり前だよ、約束でしょ」



やっぱり、嬉しさと冷静さが混じったような


落ち着いた声でそう言う



滝沢「事務所からはすぐに発表しておくよ」

『待ってください、』

滝沢「メンバーには俺から適当に言っておくから」

『お願いですっ、あと、あと少しだけ、っ、みんなといさせてくださいっ、』



別れが唐突過ぎる。


視界を滲ませながらも必死に頭を下げる



滝沢「聞き飽きたよ、退所は退所。明日までには頼んだよ」



それだけ言うと荷物をまとめて


部屋を出ていった


もう、終わり。


明日には大好きな人達が隣にはいない


それだけが頭の中をぐるぐると駆け巡る


いつか来ることはわかっていたのに


耐えきれずに涙があふれた


なんで泣いているかも


何に対して泣いているのかも


分からないままただただ止まらない涙を


必死に拭う


廊下のど真ん中でうずくまり声を出して泣いた


もう人目なんてどうでもよかった


どうせここに来るのも今日で最後だ



「大丈夫、ですか、?」



急に聞こえた声に顔を上げる



田中「え、秋じゃん、なんで泣いてんの」



少し驚きながらも


心配そうな顔で俺の顔を覗く


そんな樹の体に何も言わずに飛び込んだ



樹「おぉ、どーしたどーした」



頭を撫でてくれる彼の胸に顔を埋めながら


呼吸を整える



田中「大丈夫?」

「うんっ、」

田中「大丈夫じゃないくせに」



まだ少しだけ頬に伝う涙を


手で優しく拭ってくれる



『ほんとだよ』

田中「なんかあったらちゃんと言えよ?」

『わかってる』

田中「シェアハウスまで送っていこうか?」

『大丈夫、帰れる』

田中「気をつけろよ」

『ありがと、大好きだよ、樹っ、!』



どうせ樹と会うのも今日が最後


恥ずかしながらもきちんと伝えておいた



田中「えっ、なに急に」

『他のみんなにも言っといてっ、大好きだよって!!』



それだけ言って、頬を叩き事務所をでた


ここに来ることももうないだろう


お世話になりました、


なんて、心の中で頭を下げた











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