第25話

23.
20,801
2021/10/08 07:54





開けた瞬間



『いっ、』



激痛が走った時には


もう血がどんどん滲んできていた


ファンレターの開け口には


小さなカッターの刃が丁寧に貼り付けてあった


わざわざ、こんな手の込んだ嫌がらせを


してくる人がいることに呆れながらも


中身を確認したけど


白紙の便覧が入っていただけだった


気味が悪くなってもう一度その手紙を


封筒の中にしまった


あいにく、みんな自分のファンレターに


釘付けになってて


俺の指の怪我は誰にもバレてなかった


早めに洗い流しに行こうと


席を立てば、深澤と目が合う


バレないように切れている右手を隠して



『ちょっとトイレ行ってくる、』



それだけ言って


早足で楽屋を出ようとするけど


やっぱり、ダメだった



深澤「指、何それ」

『ちょっと、紙で切れちゃって、』

深澤「紙でそんな深く切れないから、」



そう言いながら


自分のカバンの中を漁ったあと



深澤「ねえ、誰か絆創膏持ってない?」

渡辺「え?なんで?」

宮舘「どうした?」



そう言って、みんなに聞き出す



『ちょっ、指切れただけだから、そんな大事にしなくていいって、』



なんて、慌てる俺を置いて


持ってるよ、なんて言い出すラウール



深澤「秋が良くても俺が心配なの」



ラウールから絆創膏を受け取って


口をとがらせていいながら俺の指に


丁寧に巻いてくれる



『多分さ、深澤がリア恋って言われるのはこうゆうとこだよね』

深澤「なんだよそれ」

『ありがと、もう痛くない!』

深澤「痛かったんじゃん」



それから、何故か俺の横に座って


俺のファンレターの封を開け出す



『え?それ俺宛だよ?』

深澤「怪我しても言わねえから全部俺が開けてから秋に渡す」

『なにそれ、めっちゃ過保護じゃん』



そんな俺を無視して


ファンレターを一つ一つ開けていく深澤



『え、てゆうか、なんで怪我の原因ファンレターって知ってんの、?』



そう驚く俺に


鼻で笑ったあと、何故かカッコつける深澤


今だけは、ちょっとだけかっこいいと思った



『今のは、ちょっとかっこよかったよ』

深澤「ちょっとってなんだよ!」



こんなに、優しい同期がいて


こんなに、俺のこと気にしてくれて


それなのに、騙しながらアイドルをしてる


今があることに、


やっぱり、少しだけ罪悪感を感じてしまった







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