第68話

66.
17,533
2021/11/06 12:09





こぼれそうな涙を


唇が切れそうなぐらい強く噛んで我慢する



阿部「秋、」



話が終わったあと阿部ちゃん俺の名前を呼ぶ



『なに、?』

阿部「抱きしめてもいい?」



そう聞かれ


どう答えていいのかわからず黙っていれば


いきなり視界が真っ黒になる



阿部「今の秋見てるとこっちが辛くなる」



少しの間俺の事を抱きしめたあと


体を離し俺の顔を覗き込む



阿部「でも、言ってくれてありがと、嬉しかった」



さっきまで我慢していた涙は


もう既に溢れていて


そんな涙を指で拭き取ってくれる



阿部「秋はさ」

『うん、』

阿部「強いね」

『どこが、虐待されてたようなやつだよ?』



阿部ちゃんが俺のどんなところを見て


強いね、なんて言っているのかが


全くわからず、否定する



阿部「心がだよ」

『何それっ、』

阿部「今日の秋見ててすごい思った、こんなちっちゃい体でそんな大きなことまで背負ってすごいなって」

『そんなことないよ、』

阿部「だからね、俺思ったの」

『ん、?』

阿部「どんなことしてあげたら秋が少しでも楽になるかなって」

『うん、』

阿部「死ぬまで一緒にいる」

『え、?』



まさかの答えにびっくりして


声を出して笑らいながら聞き返す



阿部「俺がこれから秋がもう二度とこんな辛い思いしないように、死ぬまでずーっと、一緒にいるの」

『なんか阿部ちゃんらしくないね』

阿部「そうすれば秋が壊れそうな時いつでも助けてあげれるかなって、」



そうやって言いながら


俺の方を向いて笑う阿部ちゃん



『阿部ちゃん』

阿部「ん?」

『ほんとにいつもありがとね、』

阿部「秋の方こそ秋らしくないこと言うね」

『俺の人生、阿部ちゃんに助けられてもらってばっかりだからっ、』



そう言って笑い返す俺の頭を撫でてから


水を取りに行ってくれた



阿部「はい、どーぞ」

『ありがと、』

阿部「今日はいっぱい泣いたね」

『そーだね、』

阿部「目が真っ赤になってる」

『明日までには収まってるといいな』



なんて言いながら2人で


夜中のリビングで笑い合った







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