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第1話

110.
15,839
2022/01/22 03:21





『俺、どこ行くかまだ知らないんだけど』



新幹線の中で、向かい側に座る翔太に


そう言えば、面白そうに俺の顔を見る



渡辺「知りたい?」

『うん』

渡辺「やっぱ秘密」



期待したのに、


そう言いながらまた笑い出す翔太


そんな翔太につっこみながらも


こんなに楽しそうにしてることが何より嬉しかった



『翔太』

渡辺「ん、?」

『楽しそうだね』



さっきからにっこにこの翔太に向かって


そんな事を言ってみる



渡辺「当たり前じゃん」



照れてんのか、目線をそらす翔太に



『俺も、』



なんて言って、


俺も馬鹿みたいに笑いながら返した


こんな平和な空間に笑えてきて


2人で向かい合いながら笑い合う


それからしばらく新幹線に揺られ


新幹線から降りた先、


木材の匂いしかしないような古い町


静かで、茶色い建物がずらりと並ぶ



『俺こうゆうとこめっちゃ好き』



目の前の光景に目を輝かせながら


隣にいる翔太の方を向く



渡辺「前に秋がそんなような事言ってたの思い出したから、」



モテる男のすることじゃん、


完全にテンションの上がっている俺は


まだ、目をキラキラさせながら周りを見渡す



渡辺「だから、今日街巡りだな、」

『まじ、?!俺そういうのまじで好き!』

渡辺「さっきからテンション上がりすぎじゃない?」

『だって、めっちゃ楽しいもん』



飛び跳ねながら、翔太の方を向けば


俺の目をじっと見てくる


首を傾ける俺を見て、


クス、とだけ笑う翔太



渡辺「よかったわ、秋が楽しそうで」

『え、?』

渡辺「最近ずっと魂抜けてたじゃん」

『そう、?』

渡辺「そうだよ」



そんなつもりはなかったのに


知らない間に心配かけていた


なんて思う俺の腕を急に掴まれる



渡辺「だから今日はお前に付き合う」



そう言って俺の腕をつかみ歩き出す翔太


それから、そんな翔太について行った


一本道の両サイドに綺麗にお店が並ぶ


休日なためか、人も沢山いた



『人、多いね』

渡辺「そーだな、まあ土曜日だしな」

『しょうがないな』



2人で顔を見合わせ


ふにゃっ、と笑ったあと


歩き出そうとする俺に



渡辺「はぐれないように、手でも繋いどく?」



なんて言って、自分の左手を出しながら


ふざけてか、そう聞いてくる翔太



『いや、いいよ、カップルじゃねぇんだから』

渡辺「だなっ、」



それから、通りに入って


色んなお店を翔太と一緒にひたすら回った











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