向井side
目黒「康二、」
名前を呼ばれ、急いで涙を拭い振り返る
『どーしたん、めめ』
目黒「無理に笑わなくていいよ」
そう言いながら隣に座る
めめは何も言わなかった
『俺な、』
目黒「うん」
『秋君が出てった夜に秋君と会っててん』
目黒「えっ、?」
俺がそんなことを言えば
びっくりした顔で「ほんとに?」なんて
聞いてくるめめ
『ほんまに、でも、俺止めることできひんかった』
目黒「康二のせいじゃないよ」
『明らかにおかしかったのに、なんもできひんかった、ごめん』
無理矢理止めたはずの涙がまた頬を伝う
そんな俺の頭を優しく撫でてくれるめめ
目黒「そんなこと言ったら、俺にも責任はあるよ」
『なんで?』
目黒「あそこでキスしなかったらこんなことになってなかったし、」
『そっか、秋君本当は女の子やもんね、』
目黒「俺さ、俺のせいでこんなことになってんのにまだ好きなの」
『えっ、?』
目黒「秋君のこと、」
そんなことを言うめめに
「女の子として?」なんて、変な質問をすれば
目黒「うん」
なんて、すぐに返ってきた
目黒「大好きな人がいなくなるって結構辛いね」
笑いながらも、俺と同じように
めめもないていた
光る星はあの日と全く変わらないのに、
全然違うみたいだった
そんな俺らの後ろで、ドアが開く
ラウ「めめっ、康二くんっ、ご飯!」
「わかった」と返事をして中に入り椅子に座る
「9人前」の料理が並んだ食卓を見るのも
これで何回目だろう
椅子は一つだけぽっかりと空いている
いつかまた、10人全員で笑い合いながら
過ごせる日なんて来るのかも分からない
もしかしたらもう一生無いかもしれない
相変わらずみんなの口数は少ないままだった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!