第5話

3.
28,752
2022/09/25 00:18



岩本照×夢野秋










「照ってマジで筋肉すごいよね」

岩本「そう?」

「尊敬する」

岩本「またトレーナーしてあげようか?」

「いや、それはいい」



全力で首を横に振れば


そんな俺を見てケラケラと笑う



岩本「一回諦めてるもんね」

「うるさいな、俺の体は筋トレに向いてないの」



無茶苦茶な理由をつけて顔を顰める


そう、前に一度だけ


照にトレーナーを頼んで


鍛えようとしたことがあった


だけど



岩本「秋さ、男のくせに筋力無さすぎじゃない?」

「俺はかよわい系男子なの」

岩本「そうゆうの自分で言わないから」



バレると思った


これ以上やって、体を壊して


そうなればもっと怪しまれる


一気に怖くなったのだ



「照、ごめん。やっぱいいや、今のままで」

岩本「えー、なんだよ」

「やっぱ俺向いてねぇわ」



無理やり作った笑顔に


一緒にできて楽しかったのに、なんて


悲しそうな顔をする照


それでも、バレないことの方が優先なんだ



「ごめん」

岩本「お前思ってねぇだろ!」

「思ってるから!」

岩本「またいつでも言ってよ、快くトレーナーするから」

「うん、ありがと、でももうないかな」

岩本「うわ、無理やらせるよ?」

「うわ、やだやだ、やりそうだから怖いわ」



そんな会話をしながら笑い合う俺の隣に


少し離れたとこに座っていた翔太が


何も言わずに歩いてきたかと思えば


急に俺の腕を掴む



渡辺「筋肉より肉だろ」



なんて、俺の腕を掴んだまま


表情ひとつ変えずにそう言う



渡辺「細すぎ」

岩本「まあ、それは俺も同感」

「べつに、これでも最近太ったし」



必死に言い訳をして


笑って誤魔化そうとする俺を


翔太は見過ごしてくれなかった



渡辺「笑い事じゃねぇから」



腕から手が離されたかと思いきや


服に手をかけられ


そのまま胸の下ぐらいまで捲られる



「えっ、は!?」



あまりの唐突ぶりに


慌てて手を払って服を戻した


胸はサラシで潰してあるけど


安心しきって良いわけではない


距離を取る俺を見て


くすり、とも笑わない翔太



渡辺「マジで心配するから、ちゃんと食べて」



翔太が怒っていたから


視線を下げて


ごめん、とだけ謝った



岩本「たしかに、秋は細すぎ」



そう言って俺と翔太の間に入る照



岩本「はい、もう終わり。秋、帰りにタピオカ寄ってくか」

「奢り?」

岩本「いいよ」

「やった」

岩本「その代わりちゃんと食べてね」



こんなさりげない気遣いも


かっこいいな、なんて毎日思う


俺の体をなんだかんだ言って


1番理解してるし


この優しさに俺は一生甘えていくんだと思ってしまった











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