第171話

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2021/12/18 08:49





目が覚めて、ムクリと起き上がる


ぐーっ、と体をのばしテレビをつければ


画面の中には


「どーもー、Snow Manでーす!!」


なんて言いながら笑っている大好きな人達の姿が映る


あれから1ヶ月


もう忘れたつもりだったのに


気づけば直ぐにテレビを消していた


そんな自分に呆れて


大きなため息をつきながら


頭をぐしゃぐしゃとかく


冷蔵庫を開ければ中は空っぽだった


今考えれば急に引っ越してきたせいで


生活用品も食料品も揃って無さすぎる



『お買い物行かなきゃ、』



水をコップ1杯だけのんで、顔を洗う


退所してすぐは外出を少し控えていたが


もう1ヶ月も経ったんだ


どうせみんな夢野秋のことなんか


忘れているだろう


なんて思いながら適当に服を選ぶ


今はもう女の子なのだから


女性らしい服装をすればいいのに


何故かいままでと同じような服を着てしまう


髪もあの時のまま、少し目にかかるぐらい


なんだかんだ言って


夢野秋という存在を


自分でも気に入っていたのかもしれない


自分で自分だった人の事を


気に入っていた、なんて言うのは変かもしれないけど


やっぱりみんなと素で笑える


夢野秋でいる時間が大好きだった


そんなことを思いながら、


カバンはどれにしようかと


クローゼットの中を覗けば


懐かしいキーホルダーがころん、と顔を出す


カバンにぶらさがってゆらゆらと揺れる


翔太とお揃いで買ったキーホルダーは


また私の胸を締め付ける



『置いてくるの忘れちゃった、』



そのカバンをクローゼットの奥の方へしまい


違うカバンを肩にかけ家を出た


大通りの目の前へ来ればすごい人だった


これはやらかした、なんて思いながらも


深く帽子をかぶり通りへはいる


何屋から行こうか、


買わなければいけないものが多すぎて迷ってしまう


首を忙しなく動かしながら


左右に並ぶお店を見ていれば


どこからか



「あれっ、!Snow Manじゃない、!?」



なんて声が聞こえる



『えっ、?』



反射的に声の向いた方を向けば


それは、紛れもなく


会いたくてたまらなかった人の姿だった












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