第211話

After story 9
9,702
2022/03/13 13:45





『え、?それだけ?』



急に変なことを言い始めるから


てっきり言いたいことでもあるのかと思ったのに


案外サラッと会話が終わる



目黒「え?それだけ、って何?」

『いや、何か言いたいことがあるのかと思ってた』

目黒「あー、ないない、」

『なにそれっ』



変に心構えてた自分がバカみたいだ


少し拗ねる私を見て


クスクスと面白そうに笑う



目黒「あなたとちょっと話したかっただけ」



サラッとそんなことを言い


ニコッと笑いながら


また私の横に座る



『めめの方こそ、変わってないね』



茶化されるかと思ったのに


以外にも何故か悲しそうな顔をする



目黒「呼び方、完全にめめに戻ったね」

『翔太が嫌そうにするんだもん』

目黒「そっかぁ、じゃあしょうがないな」

『何、しょうがないって』



なんだかおかしくなって


ケラケラと笑えば


彼も隣でクスクスと笑う


これもこれでやっぱり新鮮だ



目黒「たまには蓮って呼んでくれてもいんだよ?」

『うん、ないかな、』

目黒「うわ、ちょっと傷ついた」

『なんでよ』



今日はいつもより子供っぽい彼と


たわいもない会話をする


そんなことをしてれば


「あなたーー!!」なんて、


私を呼ぶ声が聞こえる


はーい、というのと同時に


部屋のドアが開いた



渡辺「ちょ、目黒あなたしらな、あ、いた。」



私とめめを交互に見たあと


直ぐに私の腕を引っ張る



渡辺「なんで目黒の部屋いんの?」

『ちょっとおしゃべりしてた』

目黒「これはガチです」

『ほんとにほんと』



それでも納得いかなさそうな顔をする翔太



渡辺「だとしても距離近いから」

『ごめんごめん』

目黒「じゃ、俺風呂行ってくるんで、翔太君にお返しします」

渡辺「まず預けてねぇから!!」



逃げるように出ていくめめと


分かりやすく不機嫌になる翔太


そんな二人を見てまた笑う



渡辺「マジで俺不安なんだけど」

『大丈夫大丈夫。ほんとに何も無いから』

渡辺「ほんと?」

『ほんと』

渡辺「ならいい」



そういって部屋を出ていく翔太に着いてく


何も無いけど、


少し特別な距離感であることは確かだ


この先も変わらないだろうし


変われない


もちろん翔太一筋だけど


どことなく微妙な距離があって


それが一番心地よい長さで保たれてる


彼との間は


それくらい微妙で複雑な方が


かえっていい気がした












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