第13話

11.
23,754
2022/09/25 13:40



ラウール×夢野秋









「今日は?どうだった?」

ラウ「今日はねー、もうすぐ文化祭だから何やるか話したの」

「あー、文化祭、いいね」



俺は高校に行くほどのお金なんてあるはずもなく


ずっとジャニーズだったから


こうやって、ラウールから高校の話を聞くのが


楽しくて仕方がない


憧れの高校生活を勝手に想像してみたり



ラウ「秋くんは?何やったの?」



まさかそんな質問されると思わなくて


純粋なラウールに対して固まったままでいれば


阿部ちゃんが俺の隣に座る



阿部「秋は高校行ってないよ」

ラウ「え?!そうなの!?」

「色々あってな」



笑って誤魔化すけど


なんだか重くなったこの空気に耐えられなくなった



「だから、ラウールから高校の話聞くのすげぇ楽しいの」

ラウ「ほんと、!?」

「うん、俺も高校生みたいな気分になれるし」

渡辺「単純かよ」

「うるせぇな!」



なんとか重たい空気が元に戻る


文化祭トークで盛り上がる中


ラウールがぱっ、と顔をあげる



ラウ「秋くん文化祭きてよ」

「え!?まじ!?行きたい!!」

向井「え!俺も行きたい!!」



ラウールのその言葉に一斉に食いつくメンバー達


スケジュールを確認すれば


その日は綺麗にぽっかりと空いていた


「10時に門前」と約束を交わして


嬉しそうなラウールにこっちまで頬が緩んだ


文化祭当日


結局集まったのは俺と阿部ちゃん、目黒と康二



ラウ「おまたせ!」

向井「はよいこ!文化祭とか懐かしすぎてめっちゃ楽しみやわ!!」



はしゃぐ康二に


目黒と阿部ちゃんと目を合わせて


そのまま学校へ入った


劇を見たり、射的なんかもやってみたり


目に止まったもの全てに寄った


絵に描いたような文化祭は


嘘みたいに楽しかった



ラウ「最後の1時間だけ、別行動でも良い?」

目黒「いいよ」

阿部「秋、ラウールと回ってきな」

「ん!わかった!」



背中を押され、ほかの3人と別れた後


ラウールの手を取って


まだ寄ってないクラスへ片っ端から入った



ラウ「秋くん一口」

「はい、」

ラウ「クリームついてる」

「まじかっ、」



慌てて拭き取る俺をみて


なんだか幸せそうに笑うラウール



ラウ「あー、よかった。楽しそうにしてくれて」

「当たり前じゃん、めっちゃ楽しいよ」



最後の一口を口に入れ


ソフトクリームで口がパンパンになった俺に


向き合うラウール



ラウ「秋くん」

「ん?」

ラウ「最後の花火、一緒に見たいんだけど良い?」

「もちろん」



嬉しくなって笑う俺の頬を指でなぞる



ラウ「あざとキャラ狙ってる?」

「え!またついてた?」



くすくすと笑うラウールに


恥ずかしくなった


それから、薄暗くなってきた頃


ついていった先は校舎から離れたプール



「うわ、憧れ。こんなの。」

ラウ「ほんと?よかった」

「ありがとな」

ラウ「うん」



足だけを水につけて


空を眺めれば花火はすぐに始まった


目の前にあるもの全てが眩しくて


そんな花火を見いる俺の横で声がする



ラウ「この学校のジンクス、教えてあげる」

「お、なに」

ラウ「俺が秋くんを花火に誘った理由でもあるんだけどね」



ラウールがこちらを向いたから


一度花火から目を逸らして


ラウールと目を合わせた



ラウ「この最後の花火、異性と一緒に見ると永遠に結ばれるんだって」

「え、?」



真っ直ぐに俺の顔を見ながら


少し悲しげな顔でそう言う


どくん、と心臓が波打ったのがわかった



「ラウール?俺、男だよ?」



そんな俺の頭を撫でるラウール


なんだか、俺の方が年下みたい



ラウ「異性じゃなくても、永遠に結ばれるってことはずっと一緒にいるってことでしょ、」

「まあ、そうだな」

ラウ「秋くんね、たまにすっごい悲しそうな顔するんだよ。自分で気づいてないでしょ?」



綺麗なその目が俺を捉えて


逸らすにも逸らせなかった


少しキラキラと光るその目には


うっすらと涙が浮かんでいた


なんか、ほんとに情けない。


最年少にまでこんな心配させて


なんか言ってあげないと


下唇を噛むその顔が、その目から


涙が溢れてくる前に



ラウ「秋くん、なんか言ってよ、」



肩を掴まれて、そう声を震わせる


俺の方がよっぽど子供だ


ほんとにバカで情けない



ラウ「ねえ、どこにも行かないよね」



震えた声がまた俺に訴えかける


この言葉に俺は弱い


だって嘘をつくしかないから


どこにも行かないよ、って


彼を安心させられるようなことを言えないから



ラウ「ねえって、なんで何も言わないの!僕にだってわかるよ、同じメンバーじゃん。これだけ一緒にいるんだよっ、!!」



秋くんのこと、ちゃんと見てるんだよ


なんて、か弱すぎるそんな言葉とともに


ポロポロと涙が溢れていった


まだ、言葉は出ないまま


その涙を必死で拭ってあげた


それしかできないから



「ごめん、ほんとに、こんなに泣かせて」



結局謝って終わるんだ


笑顔を付け足して、どうにか許してもらおうとして


そんな自分が大嫌いだった



ラウ「秋くん、どこにも行かないで、」

「うん、」

ラウ「約束」

「うん、約束」



小指を絡ませてそんな約束をした


花火はとっくに終わっていた


立ち上がるラウールに合わせて俺をその場を立つ



ラウ「手、」

「繋ぐの?」

ラウ「うん」



差し出された手を掴めば


痛いほどに掴み返してきた


そのまま校門へ行けば


ほかの3人はもう来ていた


繋がれた手を不思議がる3人と


その手を離そうともしないラウールに挟まれて


帰り道を歩いた


この手が離れた時


俺は自力でラウールの隣に立って入れるだけの強さを


持っているのだろうか










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