第96話

94.
16,082
2021/11/23 14:41





阿部ちゃんなら一緒に喜んでくれると思ってた


いつもみたいに、笑って良かったね


って言ってくれると思ってた


なのに



阿部「秋がまたお母さんに会いに行こうとしてるなら俺は反対する」



なんて、俺の顔を見ながら


そう言ってくる阿部ちゃん



『えっ、なんで、?』



想像とは真逆の反応に


訳が分からずに聞き返す



『なんで、?喜んでくれないの?俺っ、ずっと会いたかった母親に会えたんだよっ、?』

阿部「秋がお母さんのこと大好きだったとしても、お母さんがそうだとは限らないよ、?」

『何が言いたいの、』

阿部「お母さんは秋のこと虐待してたんだよ、?」

『お母さんが俺の事嫌いだって決めつけるの、?』

阿部「そうゆうことじゃ」

『そう言うことじゃん』



阿部ちゃんの言いたいことなんて


ひとつも分からなかった


ひとつも分からなくてよかった。



『俺、阿部ちゃんめっちゃ喜んでくれると思ってたのになんか、勘違いしてたわ、』



混乱した頭を、少し冷やそうと


それだけ言って部屋を出ようとする


でも、阿部ちゃんに腕を掴まれる



阿部「俺は秋のために言ってるの」

『どこがだよっ、』

阿部「俺、前に言ったよね?もう、秋の泣いてる顔は見たくないって、」

『だから、!!なんでっ、お母さんが俺の事嫌いって決めつけるような言い方するのっ、!!』

阿部「そうじゃなく」

『もういい』



それから、一方的に会話を切った


壊れると思った。


自分が、。



『ごめん、なんかもう喋りたくないわ』



それだけ言って


引き止める阿部ちゃんの声も無視して


部屋を出た


もう、どうしていいか分からなかった


一番の理解者だと思っていたのに、


こっちの一方的な勘違いに


過ぎなかったのかもしれない


怒りをどこにぶつければいいかもわからず


とりあえず誰とも喋りたくなくなって


自分のベットの上に丸くなって座り


感情を整理する


理解してくれない怒りだったり


どうしていいか分からない不安だったり


自分で答えを出すことも出来ない悔しさだったり


色々な感情がぐちゃぐちゃになった末


思いっきり部屋の壁を叩いた


そんな物に当たることしか出来ない自分にも


嫌気がさす


部屋の隅っこで座りながら


なんで溢れてくるかも分からない涙を


下唇を噛んで必死に抑えた









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