第10話

8.
24,616
2022/09/25 01:38



阿部亮平×夢野秋









「あ、やばい、楽屋にスマホ忘れた」



阿部ちゃんと二人で廊下を歩いてる途中


そんなことを思い出す


急いで来た道をUターンしようとすれば


腕を掴まれた



「へ?!」



変な声を出しながら驚く俺に



阿部「はい」



なんて、それだけ言って


右手に俺のスマホが置かれる



「え!なんで?!」

阿部「楽屋出る時、思いっきり机の上に置いてあったの」

「ごめん、阿部ちゃんほんとありがと」

阿部「どういたしまして」



阿部ちゃんは深澤ともう1人の俺の同期


それと共に


影で支えてくれる1番の理解者だ


ジャニーズの世界に入って


1番初めに喋ったのも阿部ちゃんだった


当時はまだ人が怖くて


ジャニーさんに紹介されてからも


怖くて自分から喋りに行くなんて


絶対に無理だった



阿部「初めまして。俺、阿部亮平です。前入ったばっかだからほぼ同期だね」

「はじめまして、よろしく、」

阿部「名前は?」

「夢野秋」

阿部「かっこいいね」

「ありがとう」



初めの頃は俺が全然心を開かなかったせいか


会話もまともに続かなかった


それでも、毎日一緒にいるうちに


気づけばお互い必要不可欠な存在になっていた


阿部ちゃんが大学に受かった時は


誰よりも喜んだ自信がある



「阿部ちゃんっ、!!!」

阿部「秋ー、」

「おめでとう」

阿部「ありがとう、秋のおかげだよ」

「いや、阿部ちゃんが頑張ったからだよ、俺なんて、大したことなんにもしてないし」

阿部「ほんとにありがとね」

「うん、ほんとにおめでとう」



そのあとも阿部ちゃんの家で


合格おめでとパーティーをした


その時に撮った


阿部ちゃんと深澤とのスリーショットは


今でも何よりも宝物


枕元にきちんと飾ってあるんだ


だから、なにかあった時は


いつも阿部ちゃんに頼ってしまう


いっつも阿部ちゃんにだけ


駄々をこねて甘えてしまう



宮舘「秋はいつも阿部のとこ行くね」

佐久間「わかる!!」

岩本「え、阿部のこと好きなの?」



なんでそうなるんだよ


いや、好きだけど


聞き方をもう少しどうにかして欲しい



「ちげぇよ、頼りやすいってだけ」



そう言いながら


阿部ちゃんを見れば分かりやすく


嬉しそうな顔をする



「あとは、頭いいし、かっこいいし、ダンスもできるし」



なんて、滅多に言わないようなことまで


ふざけて言ってみれば


やめて、なんて言って


恥ずかしそうにしながら俺のとこまで来る


口元を抑えた後


片方の人差し指を自分の口に当てる


こうやって、あざといところも


照れてる阿部ちゃんが


なんだか可愛くて



「大好きだよ」



そう言って、そのまま抱きつく


きっと今日は俺もおかしいんだ


顔をもっと赤くさせながら



阿部「からかいすぎ」



そう言って、怒られる


そのくせ、俺を自分の膝の上に乗せ


両腕を体の前に回す



「阿部ちゃん、俺動けない」

阿部「秋がふざけるからでしょ」

「だって本当に大好きだもん」

目黒「阿部ちゃんも好きでしょ?秋くんのこと」

阿部「おい、目黒黙れ」

「阿部ちゃん口わるーい」

阿部「秋もほんとに口塞ぐよ」

「うわ、やだやだ」



そんな会話をしながら


俺は阿部ちゃんの膝の上に乗っかったままだ


それを見てブーブーとうるさいメンバー達


俺が女子ってバレたら


こんなこともありえないんだろうな


なんて、当たり前のことを想像しては


少し切なくなる


今、俺がしてることは


いくらジャニーさんが許したことでも


ダメな事だから


悪いのは誰から見ても俺だから


そんなこと分かっていても


ここから離れたくないな、と思ってしまう



阿部「秋?」

「ん、?何?」

阿部「すごい悲しそうな顔するね」

「やっぱりさ、こうやってメンバーと一緒に笑い合ってる時がいちばん楽しいなって」

阿部「そうだね」



やっぱり、ずっとここにいたい


いつまで叶うかも分からない願いを


今日も密かに思うのだ








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