第63話

61.
18,125
2021/10/16 11:34





玄関から出たあとも


まだ、顔は熱いまま



渡辺「秋、」

『なに?』



そんな中、急に目の前が真っ黒になって


翔太の匂いがした



『え、なに、』

渡辺「マジで心配した」

『あ、それに関しては、ほんと、ごめん。』

渡辺「遅くなる時はちゃんと電話して」

『うん、気をつける』



それから、俺から体を離してまた歩き出す



渡辺「あ、あと最後のやつ、言わされたとしても嬉しかった」

『あぁ、うん』



と軽く返事をするが


無理やり言わされたって


思われるのも嫌だった、



『なんか、言わされた感じ凄かったけどほんとに思ってるよいつもありがとうって』

渡辺「え、照れるからやめろ、」

『俺も照れる、』

渡辺「なんかおかしいな」

『そーだねっ、』

渡辺「ホントだったってことはさ、」

『うん、』

渡辺「大好きだよ、も?」

『もー、やめろって!!』

渡辺「なに、なんか今日の秋可愛いわ」

『男なんだからかっこいいの方が嬉しいよ』



とでも言っておく


それからもどうでもいい話をしながら


シェアハウスに向かう


だいぶ近くなってきたぐらいに



渡辺「あ、言っておくけど阿部ちゃんとふっかさんガチギレだからね」



なんで、真顔で言ってくる翔太



『嘘でしょ、?』

渡辺「だいぶだよ」

『まじか、』

渡辺「うん、覚悟しといた方がいい」

『死ぬ気で行く』

渡辺「そーしとけ」



なんて言っていれば


あっという間にシェアハウスについてしまった


恐る恐る玄関を開けて中へ入り


リビングの扉を開ければ


無言で阿部ちゃんが近づいてきて


怒鳴られる覚悟を決め身をすくめると


何故か真正面から抱きしめられた



阿部「どれだけ心配したと思ってんの」

『ごめん、まじで』

阿部「なんで電話出なかったの、」

『気づかなかった、』

阿部「馬鹿、ほんとにいなくなったかと思ったじゃん」

『まだ居なくなんないよっ、』

阿部「冗談でもまだ、とか言わないで」



少し震えた声でそう言われて


あ、やってしまった、なんて思うけど


今はスルーしておく


シャワーから出てリビングに戻ったあとも


ラウールと康二が両隣にくっついてくる



向井「俺らも心配したんやで」

ラウ「僕も、もうだめだよ」



と言ってくれるから


ありがとう、とだけ返しておいた


一人一人に、おやすみ、と言ってから


リビングを出る


深澤だけはリビングに居なくて


おやすみを言いに行こうか迷ったけど


もう寝てたら迷惑だと思い


深澤の部屋の前を通り過ぎようとしたところで



深澤「秋、」



なんて、声がした



『あ、』

深澤「中、入って」



深澤の部屋の中に入りベットに並んで座る



深澤「阿部ちゃんがちゃんと怒ってくれただろうからあんまり言わないけど、俺も心配したから」

『うん、ごめん、』

深澤「これからはちゃんと言って」

『うん』

深澤「じゃあ、それだけ」



最後におやすみ、とだけ言う



『ありがと、おやすみ』



俺もそう返して


自分の部屋へ行った


また、今日も、愛されてる、


なんて思ってしまった


こんな日が続けば続くほど


別れが寂しくなるに決まってるのに、







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